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アクセンチュア、IBMで20年。退任後に始まった「求められる」仕事
まずは御社の創業から現在までの経緯と、浅野さん個人の経歴を教えていただけますか。
弊社アイデアル株式会社は、2018年3月に創業しました。それまで私は20年間、外資系コンサルティング企業で経営やITのコンサルティングに携わっていました。アクセンチュアで15年、その後IBMで5年間勤務し、ありがたいことに事業統括も経験させていただきました。退任したのは2017年です。
退任した時点で、この業界からリタイアするつもりでした。仕事から離れて、ゆっくりしようと考えていたのです。
それがなぜ起業することになったのですか。
退任後、当時のクライアントや、かつて一緒に仕事をさせていただいた方々が相談に来られるようになったのです。アクセンチュアもIBMも人材輩出企業ですので、昔一緒に働いた方が事業会社でCIOやCFO、CEOといったCXOのポジションに就かれているケースが多くありました。
彼らと話をしているうちに、「実はこういう課題に取り組んでいるのだが、なかなか自社では解決できない。ちょっと見てもらえないか」「一緒にやってもらえないか」という相談を個人的に受けるようになりました。その受け皿として法人化したのがアイデアルです。
つまり、アイデアルは最初から明確な事業計画があって創業したわけではなく、クライアントから「求められる」形で自然発生的に生まれた会社なのですね。
その通りです。私がアクセンチュアやIBM時代にやっていた、経営やITに関わるコンサルティング、特にCXO向けのサービスを、退任後も彼らと一緒に経営課題を解決していく会社として立ち上げました。
今年2026年時点で創業から8年ほどが経過していますが、その流れをずっと引き継いでいます。当然、私一人でできることには限界がありますので、アクセンチュア時代やIBM時代に一緒に働いた方々で、事業会社に行かれた方や、フリーランス、独立系のコンサルタントとして活動されている方々とパートナーシップを結ぶ形でサービスを提供しています。
それだけではクライアントのニーズに対してリソースのバリエーションが足りないため、現在は「CXOコンサルティング」と銘打って自社でポータルサイトを運用しています。そこにコンサルティング経験5年以上、もしくは企業等で重責を担われた方々に登録いただき、その方々の力も借りながら経営陣の課題解決を支援しているのが、アイデアルの現在の姿です。
浅野さん個人としては、他にどのような事業に携わっていらっしゃるのですか。
大きく3つあります。まず、今お話したコンサルティング会社の運営。次に、父が亡くなった際に引き継いだ不動産関連の事業と実家が営んでいる広告会社の経営です。そして3つ目が、スタートアップ支援や企業投資関連の活動です。もともとIBMを辞めた時は、コンサルティングの仕事をするというよりは、スタートアップの支援や企業投資をしていこうと考えていましたが、結果的にアイデアルの比重が増えた形になります。
「組織化しない」という選択。全員業務委託のビジネスモデル
コンサルティング会社である以上、どうしても属人的な面は拭えないと思います。浅野さんはこれをどのように組織化されましたか。
非常に良い質問です。実は、アイデアルは組織化していないのです。
組織の定義にもよりますが、いわゆる会社をうまく回すために色々な人を動かすための仕組みとしての組織という意味では、アイデアルにはそれがありません。というのも、社員を一人も雇っておらず、全員が業務委託なのです。
当然ながら企業である以上、バックオフィス業務も存在しますし、フロントの営業業務も、実際のコンサルティング業務も発生します。これらをすべてアウトソースしているのが弊社の特徴です。時代と逆行しているかもしれませんが、組織化せずにすべて業務委託という形で紐付ける構造にしています。
なぜそのようなモデルを選択されたのですか。
これは時代の流れとタイミングが合ったという幸運もあるのですが、ちょうど2019年から2020年にかけてコロナ禍がありました。それまでは私自身もクライアントサービスに携わっていたのですが、ロックダウンで対面での打ち合わせができなくなり、リモート中心になりました。
その時に、バックオフィス業務もフロント業務もオンラインを中心に変えていき、可能な限り自動化を進めました。そして、私自身がサービス提供することもやめました。サービス自体はアイデアルとして持っていますが、私個人の名前は出さないようにしています。
それでは浅野さんは何をされているのですか。
仕事の入り口、つまり相談は私のところに来るので、それを受けて適切な人材やチームにつなぐ役割をしています。それ以外のところはほぼ全て自動化、もしくは業務委託で対応しています。
勿論、私の秘書的な方や、仕事を進める上で中心的に動いていただく方々がいらっしゃいます。これらの方々も業務委託契約ですが、社員に近い形で関わってくださっています。その方々を中心に、様々な業務を回していただいています。
浅野さんに直接依頼したいというクライアントもいらっしゃると思いますが、どのように対応されていますか。
もともとお付き合いのあるクライアントや、私のことを以前から知っている方は、基本的にそういう依頼はしてきません。
一方で、例えばメディアに取り上げられたり、何かのきっかけでアイデアルという会社を知って、相談窓口から入ってくるケースもあります。その時は「代表個人で受けることは基本的にお断りしています」とまずお伝えしています。それでも「どうしても」という場合は、個別にお話を聞くようにしています。
私がプロジェクトに入るというよりは、誰が担当してもしっかりとした支援ができる体制を整えてきたということですね。
全ての案件について、私は提案時点から目を通しています。提案書の中身も全て私がレビューし、成果物も確認しているので、品質面では私の知見が入っている状態になっています。
工数見積もりなども私がレビューしていますので、基本的には、一定のスキルセットとクライアントの期待値に応えられる人間性やコミュニケーション能力があれば、誰が担当しても成り立つようにしています。
本当の差別化は「クライアントを深く理解していること」
同業他社も多い中で、御社ならではの強みを教えていただけますか。
アイデアルで差別化できるポイントが2つあるとすれば、まず1つは、そもそも弊社に依頼が来ている時点で、ある程度アイデアルの特性や私という人間を理解している方とお付き合いさせていただいているということです。
セールスパーソンを雇っているわけではありませんので、依頼が来る企業は私がもともと知っている企業がほとんどです。つまり、その企業における様々な事情を私自身が理解しているのです。
先ほどお話した提案書に落とし込む段階で、クライアントが気にしている経営課題、やらなければいけないこと、ターゲットや目標が何か、そこに対して今本当に足りないピースが何かというところまで分解できているのが、まず大きな違いだと思います。
もう1つは、弊社はフリーランスモデルでやっていますので、即戦力として活躍できる、経験豊富な人材のみをクライアントに提供しています。
この2つが大きな強みだと考えています。
AI時代でも残る仕事、それが「ラストワンマイル」
昨今、経営コンサルティング業の倒産が増えているというニュースも見ました。業界の現状をどう見ていらっしゃいますか。
意外かもしれませんが、倒産が増えているのは主に、本当に経営戦略だけに特化しているコンサルタントや、財務・金融ビジネスに特化しているようなコンサルタントだと思います。
やはりAIで自分でも調べられるようになりましたし、自動化もできます。何というか、地頭が良いだけの人が通用する世界ではなくなってきていると感じています。
一方で、弊社の場合は、私の出身がアクセンチュアやIBMということもあり、大きいのはITに関わるところです。
昨今ですと、サイバーセキュリティもそうですし、昔ながらのERP刷新、基幹システム刷新といったところですね。もちろん弊社はSIerではありませんので、システム構築は一切しませんが、それを進めていく時にクライアントがうまく経営陣や社員、ベンダーなどをマネジメントしきれないところを俯瞰して支援する、そういった領域があります。
ここは、AIがどうなろうと一定量なくならない世界ですし、技術の話ではなくマネジメントの話なので、そこは残り続けると考えています。
今後、業界全体はどうなっていくとお考えですか。
私はいつもメンバーに言っているのですが、当然、AIやITの加速度的な進化によって、もともとやっていたコンサルティングの仕事の半分以上、というか大半はなくなります。
しかし、どんなにテクノロジーやビジネスが進化しても、最後は人と人が向き合う領域が残ります。私が「ラストワンマイル」と呼んでいる、プロジェクトを前に進めるためのコミュニケーションは、相手が人である限り不可欠です。
そこをきちんと調整できる人、進められる人、それが正しいか間違っているかは置いておいて、きちんと前に進められる人材は残ります。
クライアントとの経営会議で全体をまとめていくところ、右を向くか左を向くかの意思決定のサポート、事前の調整、様々な橋渡しの部分、こういったラストワンマイルのところは、弊社の得意分野だと思います。
IPOも拡大も目指さない。求められる限り続ける会社
業界がそのように変わっていく中で、御社は5年後、10年後、どのような会社にしていきたいとお考えですか。例えばIPOを目指すといった明確な目標はありますか。
率直に申し上げると、IPOとか会社を大きくしようといったことは全く考えていません。
最初に申し上げた通り、この会社は大きな志で始めたわけではありません。退任した後にクライアントから求められた流れの中でやっています。また世の中の流れとして、従来のコンサルティング業務は駆逐されると思っています。
一方で、今アイデアルでやっているのは、割とラストワンマイルの話ばかりです。そこは残るのではないかと考えています。
もしかしたら、逆にそこのニーズは増えるかもしれません。既存の大手コンサルティングファームを否定するわけではありませんが、やはり大きなファームや、従来型のジュニアメンバーを育て上げて上に上げていくモデルでやっているようなファームは、AIやITの進化によって、ジュニアメンバーに経験を積ませることが極めて難しい世の中になっています。
そうすると、ジュニアの人たちがうまく育たないという問題も出てくると思います。彼らのビジネスは小さくなってしまう可能性があるのではないでしょうか。
求めるのは、ポストコンサル人材と事業承継の可能性
最後に、御社のPRや、現在抱えている課題についてお聞かせいただけますか。
なかなか言語化が難しいですね。人材の部分はうまくネットワークを作れていますし、積極的に営業をしているわけでもありませんので。
先ほどお話した他社との差別化の部分、つまり痒いところに手が届く、ラストワンマイルができるコンサルティング会社というのはなかなかありません。そういったところに興味があるポストコンサルの方で、一緒にやっていきたいという方がいれば、ぜひお声掛けいただければと思います。





