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商社→BCG→起業。王道キャリアを捨てて挑む「次世代コンサル」への挑戦

株式会社 LASINVA(ラシンバ)
代表取締役 中川 浩幸氏
公開日:
2025.07.14
更新日:
2025.07.16

総合商社からBCGへ。そして起業への転機

まずは中川さんの創業に至るまでの経歴を教えてください。

新卒で総合商社に入社し、7年半勤務させていただきました。最初の3年半は経理部で、残りの4年間は営業部門で金属関連の業務に携わっていました。

経理時代は担当営業部の会計や税務をサポートし、その後営業に転じてからは鋼管というエネルギー関連で使われる鉄パイプの輸出や現地投資先の管理、メーカーでの新商品開発支援などに取り組んでいました。

商社からコンサルティング業界への転身は、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

7年半経った頃、駐在の話が見えてきたタイミングで、ふと「このまま鉄で頑張っていくのが本当に自分にとって良いのだろうか」と考えるようになりました。

商社では「背番号制」とよく言われますが、私自身は選んでその営業部に行ったのでネガティブな思いはありませんでした。ただ、海外から戻ってきた後の中間管理職としての道筋を想像したとき、他の選択肢もあるのではないかと思ったのです。

当時は2015年で、マッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身の方の本が流行していた時期でした。「いろんな業界を見れる」「経営にアドバイスできる」という世界に魅力を感じ、力試しのつもりで受けてみたところ、BCGから内定をいただき、これも運命だと思って転職を決意しました。

BCGでの4年間はいかがでしたか?

BCGは修行の場だと考えていました。入社後に退職者の行き先を見ると、本当に様々な道があることを知り、まずはコンサルタントとして独り立ちできるまで3~4年頑張ろうと決めて頑張りました。

その後、事業会社に戻ろうと転職活動をしましたが、ぴったりとはまる企業がなく悩んでいました。コンサルは辞めないと次のプロジェクトに入ってしまうため、ズルズルと続いてしまうかもしれないと思い、ここでスパッと決めようと退職しました。

ただ、転職先が決まっていない中でお金を稼ぐ必要があったため、一旦フリーコンサルという働き方を選択しました。この経験が、後の起業につながる重要な気づきを与えてくれたのです。

フリーランス活用から自社体制へ。創業初期の大転換

起業のきっかけは何だったのでしょうか?

BCG、そしてフリーコンサルとして働く中で、大手ファームではなかなか対応しにくい領域があることに気づきました。大手企業であっても予算が限られているプロジェクトや、中堅・ベンチャー企業です。

実際に私がフリーランスで参画した案件も、ファンド投資先の中堅企業やベンチャーでした。彼らは大手ほどの予算は持っておりませんが、看板の無いフリーランスなら個人単価で対応できる部分はありますし、結局コンサルタントは人で決まるので、大手ほどの情報網やエキスパティーズが無くても、十分に価値を出せる領域はあると思いましたし、実際自身が入っている案件でも感謝されました。

そこで、フリーコンサルを活用して既存ファームとは違う戦い方ができないかと考え、事業検討を開始し、2021年10月にLASINVAを創業しました。

創業初期はどのような事業モデルだったのですか?

最初はフリーランスを活用してお客様にコンサルティングを提供するモデルでした。競合でいうと、INTLOOPさんやみらいワークスさんのようなプラットフォーム型を目指していました。

ただ、始めてみて気づいたのは、フリーランスだけでは品質管理や、お客様に寄り添った継続的な支援が難しいということでした。そこで創業してすぐに方針を転換し、自社のコンサルタントを採用し始めました。

方針転換の決め手は何だったのでしょうか?

大きな転機となったのは、創業から2ヶ月後の2021年12月に、現取締役でコンサル本部長の小島の入社が決まったことです。実際の入社は翌年4月でしたが、この決断が会社の方向性を決定づけました。

私自身はビジネスコンサルタントでしたが、時代はITです。ITをしっかり理解し、IT戦略も含めて分かっているコンサルタントが必要でした。BCG時代の知り合いの中でも、ITができる人は非常に限られていたため、彼にアプローチしたのです。

当時はまだ私を含めて3人程度の会社で、一定取引先は有れど、知見やアセット、人材含めて何もない状態でしたが、彼が参画を決めてくれたおかげで、その後の成長の基盤ができました。

品質にこだわる経営方針が生む他社との差別化

現在約100名まで成長されていますが、他社との差別化はどこにあるのでしょうか?

大きく2つの観点があります。

まず大手ファームとの比較では、最小限の体制で柔軟に対応できるフレキシビリティと、看板代が不要な分リーズナブルな価格設定が強みです。これにより大手と競合する案件でも受注でき、継続案件も多くいただいています。

一方、同じような新興コンサルファームとの違いは、品質管理への徹底したこだわりです。BCG出身だからというわけではありませんが、品質は絶対に妥協したくない部分です。

具体的にはどのような品質管理を行っているのですか?

コンサルタントの育成制度や評価システムを、新興ファームとしては真面目に構築しています。また、同じようなプレイヤーの中には、営業優先で数を追う会社もありますが、我々は品質を管理しながら拡大する方針です。

拙速な拡大はせず、一定の品質を保ちながら成長していくことを重視しています。結果として、新興ファームの中での品質面での差別化と、BCG譲りのビジネスコンサルティング力が我々の強みとなっています。

フリーランスとの関係はどのように築いているのですか?

一度案件に入って高評価だった方には、継続して良い案件や良い単価、質の高いプロジェクトを提供することで、継続的に我々の案件に参画していただいている方は多くいます。優秀なフリーランスの方とは、会食を重ねたり条件を向上させたりして、良好な関係を築いています。

経営者として学んだ成功と失敗の教訓

経営者としての成功体験を教えてください。

成功体験として挙げるなら、営業ありきで事業を築けたことです。BCGやマッキンゼー出身で起業する人は多いのですが、優秀な人材の採用に力点を置き、案件獲得は既存のクライアント頼みになりがちです。

私の場合、そもそもフリーランスという文脈から創業したので、自分で営業してお客様との関係を構築し、事業として拡大していくという考え方を持っていました。創業初期にはどうしても理想と現実のギャップを埋めるための妥協も必要ですが、事業として考えたときにどう動くべきかを常に意識していました。

コンサルタントはクライアントにアドバイスする立場ですが、いざ実際に自分でやろうとするとできない人が多いのが現実です。その点、私の場合、営業出身で泥臭くやってきた経験が活かされたと思います。

一方で、失敗体験はいかがでしょうか?

最も大きな学びは「人」に関する失敗でした。詳細は触れませんし、色んな内容で継続的に起きることではありますが、その都度、将来起きることであろうことを意識して対話を重ねていれば変わった部分もあり、経営者としての能力不足を反省しております。

学びはありましたが、組織化や人とのマネジメントは、今でも日々難しさを感じている部分ですが、過去の経験が、現在の採用や組織運営において重要な教訓となっています。

ビジネスにおいて大切にしている考え方は何ですか?

究極的に大事なのは「成果を出すこと」です。会社を立ち上げて、私自身がやりたいことや社員がやりたいことを実現するためには、成果、つまり売上と利益が不可欠です。

様々な課題や「やった方が良いこと」がある中で、事業として優先順位をつける際は、「これは成果につながるのか?」を常に問いかけています。売上・利益を出さなければ次のフェーズに進めませんし、社員の給与や新しい取り組みへの投資もできません。

特に今は、この点を重視して経営判断を行っています。

コンサル業界の未来を見据えた戦略

コンサル業界の今後3~10年の展望をどう見ていますか?

大きく3つの変化があると考えています。

まず、ニーズサイドでは、日本のコンサル市場が2030年以降に成長が落ち着くと予想しています。大企業は既にコンサルに慣れており、一部では「コンサル疲れ」も見られます。従来の大企業向け市場では、これ以上の大きな拡大は難しいでしょう。

次に、供給サイドでは、様々なプラットフォームや新興コンサルファームが参入し、まさに群雄割拠の状況です。コンサル活用の多い一部事業会社も自社向けコンサルサービスを立ち上げるなど、競争が激化しています。

そして、テクノロジー、特に生成AIの影響は無視できません。ChatGPTが止まっただけで大騒ぎになるように、AIは既に日常業務に組み込まれています。従来のコンサルの業務の中で、AIで代替できる領域が確実に出てきます。

ニーズが落ち着き、AIが業務を代替する中で、さらに厳しい競争環境になると予想しています。

その中でLASINVAはどのような戦略を取るのですか?

既存領域では、パイは落ち着いているとは言えど、まだまだ攻略できる部分があると考えています。大手が必要以上の単価で受注していた領域や、新興ファームが品質面で課題を抱えている領域です。我々は体制を強化し、品質を重視して既存パイを獲得していきます。

新しい取り組みとしては、従来のタイム課金ではなく、プロフィットシェアモデルやサブスクリプション型のサービス提供も検討しています。また、AIを活用したPMO業務など、人とAIの組み合わせによる新しい価値提供も模索しています。

コンサル事業以外の展開も考えていらっしゃいますか?

将来的には、コンサル事業との親和性を活かした人材を活用する投資モデルやファンド事業も検討しています。LASINVAという社名にも「コンサルティング」をつけていないのは、将来的に別事業を柱にしていく意図があるからです。

いきなり完全に飛び地ではなく、コンサル事業との関連性を保ちながら、新しい事業領域にチャレンジしていきたいと考えています。

地域社会への貢献とプロボノ活動

LASINVAでは積極的に社会貢献活動に取り組まれているそうですね。

私たちはベンチャー企業として、従来大企業がサポートできなかった領域に対してもしっかりとサポートし、知見や経験を還元していくことを大切にしています。

具体的には、プロサッカーチームへの支援を手弁当で行っています。現在、アビスパ福岡とザスパ群馬の2チームをサポートしており、それぞれ2年目に入りました。

どのような支援を行っているのですか?

ザスパ群馬では、学生を活用したマーケティング運営のサポートを行っています。アビスパ福岡では、昨年はスポンサー営業と人材育成をサポートし、今年は生成AI活用と起業家育成プロジェクトにも参画しています。

これらの取り組みができるのは、自由度の高い我々のような会社だからこそです。本件は、手弁当でも良いのでスポーツを支援したいというコンサルタントがいたため、会社としてアプローチした結果、素晴らしい関係を築くことができました。

学生向けの活動も行っているとお聞きしました。

過去から就職上位ランキング企業が大きく変わらなかったり、一方で、直近ではコンサルタントが学生に人気の職業になっておりますが、イメージ先行で選択するのではなく、しっかりと自分のキャリアを考えた上で決断してほしいと思っています。

以前本社で都内大学生向けのイベントを実施しましたが、その後は、情報格差のあるであろう地方大学に向けてのアプローチを行っております。

その他の社会貢献活動はありますか?

瀬戸内のブルーカーボンクレジットを手がけるベンチャー企業の支援も手弁当で行いました。地方創生にも関心があり、我々の知見を還元できる分野には積極的に取り組んでいます。

社員の中にも、こうした社会貢献に興味を持つメンバーが多く、会社としてもそうした思いを大切にしたいと考えています。

上場を目指す理由と「公的な企業」への想い

今後の会社の将来像をお聞かせください。

我々は上場を目指しています。それは単に旗印を立てたいだけではなく、「公的な企業」にしたいという想いがあるからです。

コンサルティング事業を行いながら、より広く世の中に価値提供していく会社にしていきたいと考えています。そのためには、より多くの資金や人材といったリソースが必要です。

「公的な企業」とは、どのような意味でしょうか?

私個人の企業というよりも、社会に存在価値が認められ、価値提供を続ける会社にしていきたいということです。私がやるかどうかではなく、社会に支えられ、社会に貢献する企業を目指しています。

どのような事業を行うにしても、コンサルティングというところからスタートしているので、イメージとしては、高度人材を軸にした総合サービスカンパニーというイメージかな、と。。コンサル領域の周辺を攻めたり、人材と紐づけたファンド事業を展開したりと、「人」をテーマにした事業展開を考えています。

上場による制約についてはどうお考えですか?

確かに柔軟性は制限されるかもしれませんが、上場するまでにしっかりと種まきをしておき、資金調達できたタイミングでアクセルを踏んでいく戦略を取りたいと思います。

最後に、読者の皆様に向けてメッセージをお願いします。

我々は「次世代のコンサルティング」を創造していきたいと考えています。従来のタイム課金モデルだけでなく、プロダクト等も活用した既存サービス改善、AI活用や、課金ではプロフィットシェア、サブスクリプション型など、新しいモデルを先んじて作り上げていきたいです。

現在100名程度の体制となり、第二創業期を迎えています。組織化を進める上で、コンサルファームや大手企業で経験を積まれた方に、その知見を活かして一緒に組織と新しいビジネスを作っていただきたいと思っています。

従来の大企業向けデリバリーだけでなく、プロボノや社会貢献、次の事業へのチャレンジなど、自由度の高い環境で新たな挑戦をしたい方からのご連絡をお待ちしています。

コンサルビジネス自体は好きだけれども、さらなる挑戦を求める方、ぜひ一緒に次世代のコンサルティングを創造していきましょう。

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COMPANY 企業情報

企業名
株式会社 LASINVA(ラシンバ)
代表者
中川 浩幸
所在地
〒106-0032 東京都港区六本木6丁目2-5 Bizflex六本木3F
設立
2021年10月1日
事業内容
・経営/ITコンサルティング事業
・ソフトウェアプロダクト及び関連ソフトウェアの研究開発及び流通事業
・フリーコンサルタント向けの案件マッチング事業
HP
https://lasinva.com/

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