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祖父の閉業が教えてくれたこと。アイスホッケー国体選手兼、起業家へ
まずは松村さんのこれまでの経歴を教えてください。
静岡県出身で、祖父は呉服屋、父は船舶関連会社を営んでおり、家族それぞれが異なる分野で活躍する環境の中で育ちました。
私自身は高校時代、北海道にアイスホッケー留学をしており、国体選手として競技に取り組んでいた時期もあります。その後、法政大学に進学し、1年目を日本で過ごし、2年目にはアメリカへ留学しました。
そこから起業に至るまでは、どのような経緯だったのですか。
帰国時点で単位を取得し終えていたため、卒業後はベンチャーのPR会社でインターンを経験しました。その後、ライブコマースのツールを開発する企業に初期メンバーとして参画しました。
しかし事業は思うように成長せず、事業売却を経て、現在の会社を立ち上げることになりました。
起業のきっかけは何だったのでしょうか。
最も大きなきっかけは、祖父の会社が閉業してしまったことです。
地方の過疎化が進む中で、デジタルを十分に活用できずに、事業を継続できなかった。その現実を見て、「このままではいけない」と強い危機感を覚えました。祖父だけでなく、父の会社も時代の波に飲まれていくだろうと感じました。
もう1つのきっかけは、私自身が成長する過程で出会った多くの大人たちが、必ずしも生き生きとしているようには見えず、むしろ辛そうに見えたことです。日本全体を前向きに、活気づけるような事業を手がけたいと考えるようになりました。
具体的にどのようなミッションを掲げられたのですか。
社会におけるSDGsなどの必要性よく言われると思いますが、私としては高度経済成長期で日本が伸びたように日本の消費を加速させたいと考えています。
「日本に消費を促して外貨を稼ぐ」。
これが私の創業の想いであり、今でも変わらないミッションです。日本の経済を元気にする。それ以上でも以下でもありません。
ライブコマース200万人の「感情データ」が生む新しいマーケティング
御社の事業内容について教えてください。
弊社は、ライブコマースのデータとAIを組み合わせて、既存事業に実装するマーケティング事業を展開しています。
日本では「ライブコマースは定着しにくい」と言われてきました。一方、中国では、アプリを開けばすぐにライブ配信を視聴できる設計になっており、高い視聴率を実現しています。ただし、ライブだと絶対数としては100人から1万人程度の視聴者しか集まりません。
しかし私たちは、単なるライブコマースではなく、日本の資産である“接客文化のDX”として日本文化の中に取り込み、商業価値化していきたいと考えました。
ライブコマースの本質的な価値とは何でしょうか。
テレビショッピングと比較されることもありますが、本質は異なり、むしろオンライン接客に近いものです。
情報が溢れる社会においても、総合的なコミュニケーションを通じて商品理解を深められることは、大きな価値があります。情報のシャワーを浴びせるだけでなく、顧客がどこに反応し、興味を失うのかをリアルタイムで把握できる点も重要です。
具体的にどのような仕組みなのですか。
弊社では、ライブ配信の番組設計と、それを支えるツールの両方を開発してきました。
例えば、配信中に視聴者が「この商品が欲しい」とコメントすると、自動でDMが送信され、そのまま商品購入ページへ遷移できる、といった仕組みです。誰が、どのタイミングで、どの言葉に反応したのか、というデータを現在までに約200万人分蓄積してきました。
そのデータはどのように活用されているのでしょうか。
現在は、これらのデータをAIと連携させた活用を進めています。従来のAIが効率化や自動化を目的としていたのに対し、私たちは「消費を生み出すAI」を目指しています。
具体的には、SNSの口コミやレビュー、トレンドを全てAIで収集できるツールを開発しました。そこに、蓄積してきたデータを紐付け、商品情報を入力することで、自動でニーズが分析される仕組みです。
そこから、バナーやSNSの投稿内容などマーケティングにおける戦略が出てくるツールとして現在開発しております。
「売れる動画」と「回る動画」は違う。常識を覆した発見
他社のデジタルマーケティング会社との違いは何でしょうか。
一般的なデジタルマーケティング会社は、「SNS向けのショート動画を制作」「テレビCMを制作」といった施策単体で完結するケースが多いと思います。
弊社が大きく異なるのは、ライブコマースで取得した感情データとAIを組み合わせ、「どの言葉が広告効率を高め、どの言葉が成果につながりにくいのか」という実証データを保有している点です。
また、マーケティング支援業者でありながら、自社での商品開発や、メーカーから商品開発を委託するメーカー受注業も手がけています。
従来の広告代理店とは、根本的にアプローチが異なるのですね。
はい。従来の広告代理店は、テレビやマーケティング戦略を設計し、そこからデジタル施策を展開するケースが一般的です。
私たちはその逆で、顧客のインサイト、つまり本音や潜在的な欲求に基づいたマーケティングを設計します。その上で、CAC(顧客獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)を算出し、PL(損益計算書)を組み立てています。
ここで重要な発見があったとお聞きしました。
非常に重要な気づきなのですが、「売れる動画」と「回る動画」は全く異なる、という点です。
例えば、有名アーティストを起用した美しいブランディング動画。見た目としては完成度が高いものの、必ずしも売上には直結しません。実際に、大手飲料メーカーのCM制作にも携わりましたが、ブランドクリエイティブとして優れているものが、そのまま購買につながるとは限りません。しっかりと顧客のニーズに応える“起承転結”動画でないと購買プロセスに乗らないのです。
では、どういう動画が売れるのでしょうか。
例えば「パパと同い年ですか、と言われました」「努力をしてきたけれども、なかなか結果に現れない」といった、具体的で直接的な訴求の広告の方が売れやすいです。
販売訴求をするようなものはテレビCMといったクリエイティブを重視する動画では使えませんが、デジタルではこういうものの方が獲得効率が高いのです。
高利益率の自社ブランドを生み出すまで

自社商品の開発事例について詳しく教えていただけますか。
今回、再生医療の技術が日本トップクラスの企業と共同で化粧品を開発しました。
まず我々が今まで行ってきたマーケティング実績から市場分析から着手し、美容業界では、オーガニックよりも美容医療系の検索量も広告効果も伸びているというトレンドを掴みました。
その過程で重要な発見がありました。それは、20代の消費者は、デジタル上での購買スイッチが非常に早く、次から次へと新しい商品に関心が移る傾向があるということです。
それでターゲットを変更されたのですね。
はい。ターゲットを40代後半以上に設定しました。
再生医療系ブランドの競合が弱く、大きな市場でいくと皮膚科学(ダーマ)における美容市場が広がっていたこととターゲットにした年代が合っていたこともあり設定をしました。
さらに、40代後半以降の層では、1万円と1万2000円の価格差は購買判断に大きく影響しないというデータもありました。その結果、単価を引き上げる戦略が合理的だと考えました。
価格戦略も独自のものだったのですね。
単価を上げることで利益率が向上するだけでなく、結果として対応コストの高い顧客が減少するという側面もあります。
その結果、高利益率の商品開発を達成できました。成分設計も自社で手がけており、SNSの検索量から逆算し、ニーズに合致する設計を行いました。
この時代なので、安くいいものを作るのではなく、本当に良いものをしっかりとした販売価格で提供することを我々は大切にしております。
どのようなマーケティングロジックがあったのでしょうか?
我々はCACの最小化、LTVの最大化を元に商品設計をしています。
業界の平均的な獲得コストのCACを半分以下。また、LTVの観点でも2回目の継続率が業界平均の約200%以上と非常に高い割合になっています。
なぜそれほどの成果を出せているのでしょうか。
ライブコマースで取得した感情データを基に、マーケティング戦略からクリエイティブ制作までを一貫して自社で行なっている点が大きいと考えています。
一方で、一般的に有効とされている施策の中にも、実際には効果が薄いものは多くあります。例えば、新規顧客に対するサンプル配布です。
サンプル配布の効果がないのは意外です。
サンプルを使ってリードを取ったとしても、0円〜1980円で入った顧客なので、顧客が本商品購入に転換しづらいこと。また意外とサンプルの原価と商品の原価はあまり変わらないんです。
マイクロインフルエンサーを起用して広告を回すのも、現在はほとんど効果を見出さなくなってきたため、クリエイティブの“構成”が大切になっています・
AIの時代だからこそ、昭和と令和を掛け合わせる
業界のトレンドと御社の今後の戦略について教えてください。
現在は、AIを活用して大量のクリエイティブを生成し、ABテストを高速で回す手法が主流です。
しかし、私たちはあえてその流れを逆行するアプローチを取っています。
なぜ逆行するのでしょうか。
実際に自社でメーカー事業を行う中で、AI生成のクリエイティブ、例えばインフルエンサーの動画をたくさん制作しても、十分な成果が出なかった経験がありました。
一方、強烈なキャッチコピーと、それを一部切り抜いた表現の方が、獲得効率は大幅に向上しました。
AIの時代だからこそ、意味的消費の重要性はより高まっていると考えています。D2Cブームで中間業者を省く動きは進みましたが、結果としてCPA(獲得単価)争いとなり、持続性のある成長が難しくなっている側面もあります。
商品とストーリーが重要ということですね。
おっしゃる通りです。どの企業においても、最終的には商品そのものの価値と、それに紐付く強烈なストーリーを構築できるかが重要になります。そのため、クリエイティブ1つにおいても、言葉のタッチを丁寧に作り込む必要があります。
早く大量に制作する、あるいはAIに任せて生成するのではなく、市場のトレンドや顧客ニーズを深く理解した上で、それに最も適したクリエイティブを当てにいく。その積み重ねが成果につながると考えています。
昭和的な泥臭さと、令和的なテクノロジー活用を掛け合わせた組織である点も、現在のトレンドとは異なる特徴かもしれません。
実績についても教えていただけますか。
直近ではポップアップストアを実施し、1日で約100万円の売上を達成しました。現在では大手百貨店でも常設展開しています。
また、TikTokでのライブ配信では、30分間で200万円相当を販売した実績もあります。こうした結果からも、消費行動は確実に新しい方向へとシフトしていると感じています。
シリーズB調達で、上場を目指す理由
今後の展望について教えてください。
AIを基盤とした消費プラットフォームの構築を目指しています。商品、コンテンツ、メディアを自社で持ち、そこにリテールを組み合わせる。いわゆる楽天経済圏のようなものを構築したいと考えています。
今後はさまざまな企業と事業連携しながら、この仕組みを循環させる組織体へと発展させていく構想です。商品を起点に、コンテンツやメディアを逆算して設計し、消費行動そのものを生み出すトレンドを創出していきたいと考えています。
上場を目指されているのですね。
これだけ上場が厳しい社会だからこそ上場を目指していくべきだと考えました。
失敗したら終わりではなく、上場を目指して、再現性のあるビジネスを組んでいきながら、みんなに夢を見せる。それは自分の役目としてやっていくべきだと思っています。
事業責任者と事業連携パートナーを募集中

最後に、PRしたいことについて教えてください。
2点あり、1つ目は採用についてです。
事業拡大をしているため、元大手企業の管理職などのキャリアのある方も直近は参画いただいていており、引き続き中途ポジションを募集中です。
そこで、事業を任せられる方、マーケティングやメーカー、メディア、広告代理店のいずれかで実績のある方を求めています。
2つ目は何でしょうか。
消費プラットフォーム構築に向けた事業連携企業を探しています。
AIと連動しながら消費を科学できる企業、メーカー・メディア・コンテンツの3つを持っている企業と連携していきたいと考えています。
M&Aではなく、業務提携でも構わないのですね。
はい。実際に、企業のIPや24時間ライブ配信を行うIPを共同で開発しようという取り組みを、IT企業とも進めています。
良いものを作っているのに売れない企業さんはたくさんいらっしゃると思います。商品性だけで勝てる時代ではなくなりました。ちゃんと良いものを作りつつ、意味消費を促していく。そこに私たちの価値があると考えています。
ぜひ一緒に、日本の消費を盛り上げていければと思います。





