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「ハンガー専門会社なんて存在しない」業界の常識を覆し、独自のポジションを確立

株式会社チャナカンパニー
代表取締役社長 田島 尚也氏
公開日:
2025.09.18
更新日:
2025.09.19

副資材メーカーから“店舗用ハンガー事業”への転身

まずは田島社長のご経歴と、御社創業の経緯をお聞かせください。

株式会社チャナカンパニーは今年で21年目を迎えます。私はもともと大学は理系でしたが、第二新卒のような形でこの業界に入りました。

最初に就職したのは大阪本社の会社で、当時はアパレル向けでも店舗備品ではなく、副資材と呼ばれる商品用のハンガーを扱っていました。商品用の黒いプラスチックハンガーや、織りネーム、下げ札といった、いわゆる副資材を生産販売している会社でした。

26歳で東京支店の立ち上げを任されて以来、東京を拠点にしています。

当時のアパレル業界はどのような状況だったのでしょうか。

アパレル業界はちょうどSPA(製造小売業)の時代になってきて、メーカーが直接お店を持つようになっていました。そうした中で、商品用のハンガーもリサイクルされるようになり、あまり価値の高い商品ではなくなってきたのです。

東京支店時代から私は店舗用のハンガーやショッパーに目をつけて、そちらにビジネスを切り替えていきました。消耗品ではない店舗用ハンガーは、一度納品すると何年も使っていただける商品ですが、当時は店舗用ハンガーだけで会社を起こすような企業はどこもありませんでした。

41歳で起業、業界初の「店舗用ハンガー専門会社」を設立

独立を決意されたきっかけは何だったのでしょうか。

37歳頃に前職を退職し、41歳で起業しました。店舗用ハンガーからスタートしたのですが、当時は店舗用ハンガーだけで会社を起こすような企業はどこもなく、主力商品として扱っているところもありませんでした。

マネキン屋がついでにハンガーをやっている、ショッパー屋がハンガーをやっている、それこそ商品用のハンガー屋がやっているという状況で、店舗用ハンガーを主力商品として扱う会社は存在しなかったのです。

どのような戦略で事業を展開されていったのですか。

この業界は10年周期で大手が変わる特徴があります。当時はイトキン、ファイブフォックスの時代があって、渋谷・千駄ヶ谷周辺はまさにその中心地でした。その後オンワードが一番手になり、今はファーストリテイリングなど、形が変わってきています。

私はアパレル業界がピラミッド型の構造になっていることに着目し、まずは大手との新規取引を積極的に進めました。大手がやることは小さいところも真似する業界特性があるためです。

また、ビームスやトゥモローランド、ユナイテッドアローズといった、品質やデザインへの要求水準が高いセレクトショップも重要なターゲットとして捉えました。これらの企業をしっかりと押さえていったことが、会社を継続できた最大の要因だと考えています。

リース中心の業界で「販売」という新たな価値提案を確立

マネキン業界との差別化はどのように図られたのでしょうか。

マネキン業界は100社以上と非常に細分化されていますが、辿ってみると製造元は一緒だったりします。日本のマネキン業界はリース制度を確立し、メンテナンスも含めて月額料金でサービスを提供する仕組みを作り上げていました。

しかし、中国で製造すれば、日本で20万円かかるマネキンが1万円で作れるのです。1万円で作れるものを月1万円でリースしているなら、3万円で販売すれば3ヶ月で新しいものが作れますよ、という提案を始めました。

リースは行わず、東京を拠点に商品を開発し、販売に特化してマネキンを展開する戦略を取りました。お客様の中にはリースを希望される方もいらっしゃいますが、購入した方が安いということを理解していただき、定期的に買い替えをしていただくお客様に対して事業を拡大していきました。

なぜ販売モデルが成功したのでしょうか。

実は、リースという仕組みは日本特有の制度であり、海外ではほとんど存在しません。海外の大手ブランドはすべて「販売」が基本で、中国では数年間の使用を前提にした大規模な計画に基づいて生産が行われています。

つまり、海外ブランドにとって販売モデルはごく当たり前の考え方だったのです。しかし、日本のマネキン業界は独自に「リース」という仕組みを築き上げてきました。私は価格面で大胆な挑戦をしたかもしれませんが、本質的にはグローバルスタンダードに合わせた提案をした、という点こそが成功につながったと考えています。

小ロット・多品種対応で他社にはできない提案力を実現

御社の最大の強みは何でしょうか。

私たちはパイオニア的な存在として、基本的に誰もやっていないことを多く手がけています。ハンガーにしても、小ロット・多品種対応というのが最大の武器です。

ハンガーも時代とともに小ロット・多品種の時代になってきました。従来のような大量生産・専門ロットでの価格競争ではなく、アパレル企業も洋服と同じで無駄なものを作らない時代になったのです。

本当に1店舗ごとに製作する形になり、「A店舗は175本、B店舗は50本」といったオーダーが当たり前になりました。その都度お客様にお越しいただき、様々な打ち合わせをしながら、きめ細かに対応していく必要があります。

他社との差別化はどこで生まれているのでしょうか。

アパレル企業も最近は変わってきました。以前は他社との比較が中心でしたが、今では「予算をしっかり決めて取り組む」ようになっています。つまり、1店舗を作る際に内装費などを含めて、限られた予算でどれだけ実現できるかを考えるようになったのです。

担当者の方も、「予算の範囲内で良いものを作る」という発想に変わってきました。その結果、チャナカンパニーに依頼すれば、必要な数だけ良いものを作れると信頼していただけるようになりました。

現在では、コンテナに何十ものブランドの商品が入ってくる状況でも、ほぼ独占的にこのサービスを提供しています。この領域は他社が簡単に追随できないと自負しています。

コロナ禍をきっかけにD2C市場とホテル業界へ展開

新型コロナウイルスの影響はいかがでしたか。

コロナでアパレル業界が厳しい時期もありましたが、実はハンガー専門の会社というのはほとんど存在しないのです。そのため、コロナ禍の時にD2C市場に参入しました。

一般向けのハンガーは雑貨業界の一アイテムに過ぎず、ハンガー専門の会社は手がけていません。私たちは見た目にこだわったハンガーを開発し、「Balmy(バルミー)」というブランディングでハンガーブランドを作りました。

さらに、その独自の形状で特許を取得したことで、弊社でしか作れないハンガーを開発しました。一般向けに販売するとともに、ホテル業界にも注目し、事業を拡大しています。

ホテル業界への参入の経緯を教えてください。

これまで私たちはホテル業界にはほとんど関わっていませんでした。しかし最近のホテルでは、客室や施設の内装にこだわる傾向が強くなってきています。以前のようにクローゼットの奥にハンガーを隠しておくのではなく、壁に掛けたり、部屋の内装に合わせたデザイン性の高いハンガーを求めるようになったのです。

こうした変化は、アパレル店舗で見られる傾向と非常によく似ています。店舗での什器や備品にもデザインへのこだわりが強まる中で、私たちのハンガーの需要が高まってきました。その結果、ホテル業界においても、私たちのハンガーは欠かせない存在となっています。

また、一般向けの商品展開も進めています。大手量販店への卸売りはもちろん、オンライン販売も積極的に行い、幅広いお客様に私たちのハンガーを届けられる体制を整えています。こうして、ホテル業界と一般市場の双方で事業を拡大している状況です。

海外戦略と今後のビジョン

今後の業界トレンドをどのように見ていらっしゃいますか。

日本のアパレル業界では、海外で大きく成功する例はあまりありません。人口が減少する島国である日本では、アパレル企業同士の買収や統合が進む傾向にあり、最近ではM&Aによる再編が活発に行われています。

私たちは、競合他社がいないため、このような形で事業を継続できていますが、海外戦略は重要だと考えています。アパレル企業もようやく海外展開に本格的に取り組むようになってきました。

以前は海外に出ても失敗するケースが多かったのですが、現在は日本の物価が諸外国、特に東南アジアと比べてそれほど変わらなくなってきています。また、日本の温暖化により、これまで暖かい地域では売れなかったアウター類の需要も変化しています。

今後の事業展開についてお聞かせください。

アパレル業界ではデザイン性だけでなく、機能性のある商品にシフトしてきています。そうした機能性のある商品であれば、アジア全域で販売できると考えています。

私たちも、小ロット・多品種の商品を中国で生産しながら、日本だけでなく海外の店舗にも配送できる体制の構築を進めています。実際に、そのような依頼も徐々に増えてきています。

中長期的な目標をお聞かせください。

短期的な目標として、まず4〜5年以内に海外展開を進めようとしているところです。それに加えて、現在少しずつ手がけているホテル業界を、今後の大きな柱に育てていきたいと考えています。

ホテル業界は非常に細分化されていますが、結局アパレルと同じで内装に合わせた商品や、環境配慮型の商品への感度がアパレル業界よりも高いのです。インバウンド向けに、そうした取り組みをしているホテルでないと選ばれない時代になってきています。

ホテルの客室備品についても、環境に配慮した商品をどんどん開発しており、アパレルと同様に大きな柱に育てていこうと考えています。

D2C市場についてはいかがでしょうか。

D2C市場については、ブランディングで現在も悩んでいますが、日本人だけでなく世界中どこでも家には必ずハンガーがあると思います。

ハンガーに関しては、弊社でしかできない特殊な商品を世界中にブランディングして販売していきたいと考えています。D2C向けは世界展開、アパレルやホテルも世界に広がっていくと思いますが、まだまだ成長の余地がたくさんあると感じています。

最後に、御社が求めている協業パートナーや人材についてお聞かせください。

人材については、実はこれまでほとんど苦労したことがありません。求人を出せば非常に多くの応募をいただくことができ、コロナ前には一度に700名もの応募があったこともあります。こうした状況は、弊社の事業内容や成長性に興味を持ってくださる方が多いことの表れだと感じています。

現在は、「READY TO FASHION」というファッション業界に特化した求人サイトを活用しており、毎年新卒を中心に3名程度の採用を行っています。採用人数は少なくとも、入社した人材は即戦力として活躍してくれることが多く、組織の成長をしっかり支えてくれています。その結果、売上も倍以上に伸びる中で、必要な人員もほぼ倍程度に増やすことができました。

一方で、現在の一番の課題はD2C市場でのマーケティングやブランディングです。オンラインを中心に直接消費者に届けるこの分野では、競争も激しく、単に良い商品を作るだけでは十分ではありません。そのため、マーケティング会社やブランディングのコンサルタント、さらにはSNS運用の専門家など、さまざまな外部の専門家からアドバイスをいただきながら、試行錯誤を続けています。まだ模索の途中ではありますが、こうした取り組みを通じて、より多くの方にブランドの価値を伝え、信頼していただけるように努力しているところです。

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COMPANY 企業情報

企業名
株式会社チャナカンパニー
代表者
田島 尚也
所在地
<本社事務所>
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-3-1 TH1 5F
<営業ショールーム>
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-32-5 gran+HARAJUKU 1F
<Golf Land Balmy>
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-3-1 TH1 1F
設立
2005年(平成17年)1月5日
事業内容
店舗備品・什器の企画・製造・販売
ノベルティの企画・製造・販売
リユース・リサイクルシステムの開発・運用
小売向け商品の企画・製造・販売
飲食店運営
HP
https://chana-company.com/

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