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一杯のコーヒーから世界へ――「えっ?!」と驚くことをしたい
ーー社長と会社の略歴を教えてください。
もともと専門学校から大学に進学し、渋谷の某有名コーヒーチェーン店でアルバイトをしていました。そこでご縁があった方にお誘いいただき、おもちゃメーカーへ入社しました。
そこでは約8年、社長のアシスタントとして働いてました。
その後、アパレルの会社に転職して、マーケティングやコラボ企画などを担当します。
そこでも約4年半ほど経験を積みました。
その頃、いろんな経営者と出会う中で、自分でもやってみたいなと思い始め、独立を決意しました。奥さんの地元だった福岡に移住して「NO COFFEE」を立ち上げたのが約10年前です。
最初からコーヒーとグッズを掛け合わせたブランドをやろうと決めてました。
今では国内外にも展開していて、会社としては「株式会社NO CORPORATION」として事業を進めています。

ーーコーヒー屋さんをはじめようと思ったきっかけはなんですか?
きっかけは、学生時代に某有名コーヒーチェーン店でアルバイトをしていた経験が大きいですね。
もともとコーヒーがすごく好きだったんです。
ただ、単に“コーヒー屋をやりたい”っていうよりは、“自分の好きなものをどう形にするか”っていう思いの方が強かったかもしれません。
当時から普通のカフェをやっても利益が出にくいのはわかっていたので、じゃあ何を掛け合わせたら面白いかと考えたときに、自分がアパレルやものづくりの現場で経験してきたことを活かせるなと思いました。
当時はインスタの影響力が高まっていた時期で、私も7000人くらいフォロワーがいたんです。“これなら広告費をかけなくても勝負できる”と、根拠のない自信だけはありました。
ーー福岡に移住された経緯を教えてください。
私自身はもともと東京で働いてたんですけど、奥さんが福岡出身だったこともあって、福岡にはよく行っていました。
普通は東京に出店すると思うのですが、コストも高く、東京で店をやるイメージがどうしても湧きませんでした。
福岡は、物件や生活コストも現実的で、奥さんに“福岡でやってみようか”と相談して、OKをもらって移住したのが始まりです。
ーー幅広く事業を展開されていますが、メインの事業はなんですか?
メインは“コーヒー屋”です。
飲食業としてスタートしてるんで、そこがベースにはなります。
ただ、いわゆる“普通のコーヒー屋”とはちょっと違っていて、最初から“コーヒー×グッズ”の形を取っています。
最近は似たような取り組みをしてるお店も増えましたが、当時はほとんどなかったです。
だから私の中では“NO COFFEE”というブランドは、コーヒーショップでありながらも、新しい形のライフスタイルブランドという感覚です。
実際、アパレルや雑貨の売り上げ比率も高くて、客単価も普通のコーヒー屋さんとは違います。
店舗での販売に加えてオンラインやポップアップも展開していて、グッズを中心にコラボ商品などでも動いているので、そこも大きな柱になっていますね。

ーーアパレルをはじめたきっかけを教えてください。
もともとアパレル業界で働いていた経験があったので、商品企画やコラボ、ライセンス管理まで幅広く携わってこともあり、ものづくりに対する土台はありました。
ただのコーヒー屋じゃ面白くないし、差別化できないと思って、自然と“グッズと組み合わせる”という発想になったんです。
Tシャツやマグカップを作っているカフェは当時も少しはありましたけど、ブランドとして本格的に展開してるところはほぼなかったと思います。
最初は資金もない中で、融資を受けて在庫を抱えるリスクもありましたが、それでもやる意味があると思えたし、結果的にそこが“NO COFFEE”の個性になったと思っています。
ーー海外へ進出された経緯はなんですか?
一番最初は上海への出店でした。
もともと福岡で2店舗目とか東京出店っていうのが“普通”だと思いますが、誰も想像つかない驚かれるようなことをやろうと思い上海に出店しました。
ちょうど知人を通じて中国のパートナーを紹介されたタイミングだったので話もスムーズに進みました。
私自身、もともと海外志向が強くて、国内よりも外に広げていきたいという気持ちもありました。
ただ、その後すぐコロナが流行りだしてしまい、最初の上海の店舗はクローズしています。
ですが、今は中国国内に別店舗があって、さらに韓国・ソウルや台湾・台北にも展開しています。
すべて現地の信頼できるパートナーと組んでやっていて、完全に縁とタイミングでつながったと思います。
感覚を信じて、ブランドを育てる──“見せ方”を変えて広がったNO COFFEEの世界
ーー他社との差別化ポイントを教えてください。
やはり“圧倒的な商品点数”と“コラボの多さ”だと思います。
うちはコーヒー屋でありながら、グッズやアパレル展開が非常に多くて、それだけで他社とは違うと自負してます。
ただ物を作っているだけではなく、地場企業さんや異業種のブランドさんとのコラボも多いです。
自分たちで販売するケースもあれば、相手先だけで販売しロイヤリティ収入を得る形もあります。
このように複数の形で展開でき、毎月コンスタントにロイヤリティ収入があるのは、コーヒー屋としてはかなり珍しいと思います。
そういった柔軟性と発信力が、当社の大きな強みだと考えています。
ーー成功体験と失敗体験を教えてください。
強いて言うなら、失敗体験は“採用”です。
コロナ前のタイミングで、私と同じような仕事を任せられる人がいたら楽になるかなと思い、採用しました。ですが“自分でやった方が効率が良い”と感じるようになり、かえって私のストレスになってしまいました。
外部とのやりとりや生産管理は、自分で責任を持ってやらないと納得できない部分が多いので、人に任せるのは難しいなと痛感したことが失敗経験です。
一方で成功体験で言えば、“ゴルフライン”の展開は大きかったです。
大阪を拠点にしている、ゴルフショップ”CLUBHAUS”さんと組んでゴルフウェアを作ったのですが、売れ行きは今でも好調です。
私自身がゴルフにちょうどハマり始めた時期で、世の中的にもゴルフブームが来ていたタイミングが重なり、販売開始からすごい勢いで売れました。
今ではその流れで別会社でNAAFYというゴルフブランドも立ち上げています。
偶然が重なった部分もありますが、自分が本当に“いいな”と思ったものを素直に形にした結果、ちゃんと売れたというのは、自信にもなり、“自分の感覚を信じていいんだ”と思えた瞬間でした。
ーー業界のトレンドとそれに対する御社の動き方を教えてください。
正直、私はあんまり“同業他社”を意識しません。
コーヒー屋というジャンルではありますが、やっている内容が違うので比較しようと思ったこともありません。
ただ、“1店舗だけでやる限界”は感じています。
今の福岡店はスペース的にも小さく、今の事業規模に合っていません。
そこで去年、博多駅でポップアップを開催しました。
すると想像以上に売れて、“やっぱり人が集まる場所ってすごいな”と肌で実感しました。
それを踏まえて、今は水面下で天神エリアへの出店準備中です。
より広いスペースで、飲食とグッズの両方をしっかり見せられる環境を整えていく予定です。
業界のトレンドを追うというより、自分たちの強みを最大限に活かして、売上とブランド価値を高めていく方向に動いてますね。
ーー博多駅でのPOPUPに詳しくついて教えてください。
去年のゴールデンウィーク前後に、博多駅の切符売り場のすぐ横という、すごく人通りの多い場所で1ヶ月ほどポップアップを開催しました。
店舗にはわざわざ目的を持って来てくれる方がほとんどです。ですが、駅のように人が多い場所ではどれくらい反応があるか試してみました。
結果としては、想像以上に売れて正直びっくりしました。
準備した商品が足りなくなるほどで、売上も1ヶ月で2,000万円以上を達成しました。
“立地の力はすごいな”と改めて感じました。
そこから“もっと見せ方を広げれば可能性がある”という確信が持てて、今はその経験をもとに天神エリアでの新店舗を動かしているところです。

ーー社長の最終的な目標はなんですか?
私の最終的な目標は、企業価値をつけることですね。
上場ではなく、価値をしっかりと付けたうえで、いずれは会社を譲渡したいと思っています。
サービス業はやっぱり大変な部分も多くあります。特にBtoCですと、お客さまの数が多い分、トラブルやクレームも比例して増えるのが現状です。
もちろんやりがいもありますが、年齢を重ねるにつれて、同じテンションでやり続けるのは難しいと考えています。
今はまだ元気に動けますが、今後どうなるかはわかりません。
だから50代のうちに“NO COFFEE”の価値を最大化させて、納得できる形で次のステージに進みたいという思いが強いです。
そのために、日々どうやってブランドを育てていくかを考えて動いています。
ーー社長が大切にされているビジネスの考え方を教えてください。
基本中の基本ですが“即レス”です。
私は未読メールや未返信のLINEが溜まってるのが嫌なので、可能な限りすぐ返すようにしています。
大企業ではないので自分で判断でき、返事が早ければその分プロジェクトも早く進みます。
相手にとっても“この人は仕事が早い”という信頼につながりますし、そこからまた別の仕事に広がることもあります。スピード感はビジネスをする上でとても大事だと考えています。

地場の企業と福岡を盛り上げていきたい
ーー御社が取り組んでいる地域との関わり方について教えてください。
地元・福岡でやっているからこそ、地場の企業さんと一緒に何かやりたいっていう思いは強いですね。
最近だと、チロリアンでおなじみの「千鳥饅頭総本舗」さんとのコラボや、出汁の「味の兵四郎」さんとの取り組みもありました。
それから、福岡銀行や熊本銀行などが所属するFFGグループとのキャンペーンも実施して、地元に根差した展開ができたと思っています。
派手に地域貢献というより、“一緒に盛り上げる”という感覚で、福岡ならではのプロジェクトに積極的に取り組んでいますね。
ーー最後に御社のPRをお願いいたします。
“NO COFFEE”は単なるコーヒーショップではなく、“コーヒーのあるライフスタイル”を提案するブランドとして、グッズやアパレル、他業種とのコラボなど幅広く展開しています。
今後は福岡・天神での新店舗オープンも予定しており、さらにブランドの価値を高めていきたいと思っています。
また、私たちの世界観に共感し、共に新しい形をつくれるようなパートナーとの出会いも大切にしていきたいです。
まだまだ進化途中のブランドですが、これからも“えっ!?”と驚かれるような挑戦を続けていきます。