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27歳で起業、業界そのものをゼロから創った23年間
まず、会社の創業から現在までの経緯を教えてください。
もともと起業しようと決めていましたので、ベンチャー企業を探して入社しました。その会社で5年ほど働き、そこから27歳の時に独立したのです。
会社を作ったのは27歳の時でしたが、実際に事業をスタートさせたのは29歳の時でした。創業としては25年経ちましたが、実業としては23年間リラクゼーション事業をやっているところです。
もともとはリラクゼーションというビジネスに目をつけ、「Re.Ra.Ku(リラク)」というブランドを立ち上げました。ただ、当時はリラクゼーションというビジネス自体に産業分類も職業分類もなかったのです。
業界がない状態から、どのように事業を進められたのですか。
リラクゼーション業協会という協会団体をライバルたちと作りました。今では業界最大の団体になったのですが、その立ち上げ理事として私も参画しました。
国に対して働きかけを行い、「リラクゼーション業」という産業分類を認めてもらったり、「リラクゼーションセラピスト」というセラピストの職業分類も認めていただきました。業界そのものをゼロから作り続けて、今ようやく社会的な認知を得られるようになりました。
会社としては、私たちが業界団体の中で初めて、上場を果たすことができました。しかもそれが日本ではなくアメリカのナスダックという市場でした。
現在の事業展開について教えてください。
現在、日本国内では「Re.Ra.Ku」を中心に、全国約300店舗を運営しています。
最近は事業の軸足も変わってきていまして、メタボリックの方が体質改善するダイエットをオンデマンドでトレーニングするという仕組みも展開しています。
他には、デバイスの開発ですとか、リハビリテーションの事業ですとか、ヘルステック系への展開を進めている状態です。
東証に断られ続けた理由。ナスダックを選んだ2つの背景

国内ではなくナスダックを選ばれた理由について教えてください。
理由が2つありまして、1つは時間の問題、もう1つは規制の問題です。
規制の話から先にしますと、もともと上場は2006年頃からやろうということでずっと目指していたのですが、東京証券取引所がイエスと言ってくれなかったのです。そもそも産業分類がない、職業分類もない、業界がない、自主規制もない、これではやはり無理ですということがあったのです。
そこで、産業団体を作って、自主規制を作り、保険制度を整備して、ユーザーが万が一不利益を被ったとしても保険でちゃんとカバーできるという仕組みを作りました。それから国に対して産業分類や職業分類の認定をしてもらうための働きかけをして、一つひとつステップを踏んでいったのです。
それでも東証は認めてくれなかったのですか。
ところが、それでも東京証券取引所の方が、「医療類似行為との区別は何ですか」ということにこだわっていたのです。医療分野というのは、保険が使える厚生労働省管轄なのですが、私たちの産業というのは、健康増進、ウェルネスなのです。保険を使う治療ではないのです。健康増進で経済産業省が管轄したのですが、そこは良しとしてくれないのです。ですから中途半端な市場じゃなくて、ナスダックのような世界最大の市場に行こうと決めたのが1つの理由です。
もう1つの時間の問題について教えてください。
2020年4月に新卒生74人を採用したのですが、コロナ禍になって緊急事態宣言が発令されました。入社した日の次の日に出した指示が、自宅待機なのです。これがきつくて、緊急事態宣言で政府の要請に従ってショッピングモールが閉まりましたから、私たちの売上がゼロになってしまうのです。
だけど家賃を払わなきゃいけないし、雇用しているから人件費を支払わなきゃいけないのです。家賃が大体月1億5,000万円、人件費で1億5,000万円、大体3億円ほどの運転資金が必要なのに、売上ゼロという超危機的状況に陥りました。
銀行からの融資は受けられなかったのですか。
「融資してください」と言ったら「断ります」と。「なぜですか」と聞いたら「この状況がいつまで続くかわからないから様子を見ましょう」と言われたのです。「いや、様子を見ていたら倒産してしまいますよ」と言ったのですが。
貸してくれなくて銀行融資なし、売上ゼロ。助成金も店舗事業者の中小企業継続化助成金が1店舗50万円出たのですが、2店舗以上でも上限100万円だったのです。うち300店舗あるのに、補助金が出たのは100万円だけなのです。
もう残った調達手段は何かというと、身売りするか上場するかという2択になったのです。
そこからどのように上場を実現されたのですか。
2020年4月29日の役員会で、上場を目指そうと、まだ現有資金があるうちに今振り切ってやるしかないと意を決しました。結果的に8カ月後、2020年12月29日に上場しまして、約14億円の資金調達ができたことで生き延びたのです。
120ステップの教育システム。他社との圧倒的な差別化

同業他社と比較した御社の特徴や強みについて教えてください。
実は一番大事なことはトレーニングシステムにありまして、教育が圧倒的に他社とボリュームが違うのです。
どういうことかというと、他のリラクゼーション企業というのは、セラピストを採用してから2週間、施術の仕方を教えてデビューして、それで終わりなのです。その後、スキルアップというのは自由で、自分でやってねということなのです。
私たちの場合、「リラクカレッジ」という教育システムを作っていて、一度2、3週間で仕上げた人が現場に行った後に、また座学を受けたり、技術のブラッシュアップ研修を受けたり出来ます。
これが120のステップがありまして、長く働くだけ、より知識量や技量が上がっていくという仕組みです。この仕組みを持っているのは、実は業界の中で私たちしかないということです。

セラピストの育成について、特徴的な取り組みはありますか。
セラピストって今までは基本的に整体学校などに通って、高いところだと50万円ほど払って勉強するのです。それで就職するというのが今までの常識だったところを、私たちは0円にしたのです。
無料で来ていただいて、やってみたら才能を発揮する人もいるものですから、育成で収益化しないということは、かえって競争優位性もあったということです。
利用率20%超、成長率3.4%。高齢セラピストが拓く新たな可能性
今後の業界トレンドと御社の方向性について教えてください。
業界全体で言うと、市場規模は年々拡大しており、国内の利用率が女性が約30%男性が約20%なのです。だから日本人口1億2000万人の約25%だと3,000万人ほどの人々が利用しているのですが、逆に言うと7~8割の方はリラクゼーションを利用していないという状態なのです。
市場規模も年々伸び続けているので、高い成長率のビジネスを持っています。
ご参照元:美容センサス2025上期
長期的な視点では、どのような変化が予想されますか。
少子化じゃないですか。これから次の25年どうなるのかというと、大幅に人口が減ってくるわけです。
働き手も不足していくので、おそらく今と同じ形態であり続けることは難しいだろうなと思っているのです。より複合型になっていく必要があるなと思いますし、働き手が高齢化していくことになるので、年を取っているセラピストの方々が若い現役世代のストレス緩和のために働くという社会に切り替わっていくのだろうなと思います。
具体的な事例があれば教えてください。
ある店舗では、バーバーズという人たちがいまして、70代、80代手前の方々がセラピストとして働いているのです。自分たちでバーバーズと名乗っているのですが、指名がすごいのです。
「おばあちゃんだから力は弱い」のですが、若い女性からの指名が多いのです。どういうことが起きているのかなと見てみると、悩み相談なのです。「伊達に女を70年やってないわよ」みたいな。「あんた、この程度の悩みなんて大したことないわ」みたいな。「こうした方がいいわよ」とか。もうなんか占いのおばちゃんみたいな感じです。
身体を触ってもらって癒やされながら、人生相談もできる。これは需要があるのだなと。そういう需要、メンタルケアの分野にかなり入っていくのではないかなと思っているので、実は意外と高齢者の女性の働き方には、すごくマッチするのではないかなと思っているのです。
海外展開、World提携、先端医療保険。3つの成長戦略
今後の短期・中期の取り組みについて教えてください。
短期の目線でいうと、基本的に国内ローカルだけだと生き残れなくなっていきますので、海外への進出が必要になってくると思っています。
やりたいことが3つあるのですが、1つはまず充電不要のスマートトラッカー「MOTHER Blacelet 」です。国内では自衛隊や介護施設など、海外にも導入してもらっている実績がありますので、軍隊やナーシングホームなどの介護施設とか、こういったところにスマートトラッカーを入れていきたいという、海外への進出が1つ目です。

2つ目の戦略について教えてください。
2つ目は、Worldという本人確認と暗号資産を組み合わせた事業です。この事業は、OpenAIとは別にサム・アルトマン氏が立ち上げたもので、私たちはその日本における最大のパートナーを担っています。Worldでは、生体認証によって本人確認を行い、その登録の対価としてトークンを配布する仕組みを通じて、利用者を増やしていくことを目指しています。現在は、今後1年で国内に約3,000か所の登録拠点を設けることに挑戦しています。
期的なビジネスモデルとしては、トークンの配布や流通に伴う手数料収入が中心です。ただし、本人確認用のデバイスと組み合わせることで、個人の認証情報と健康などのパーソナルデータを紐づけたデータ基盤を構築できます。
これにより、将来的にはヘルスケア分野の大規模データを活用し、個人間で疾病リスクを分散・共有するような仕組み(保険に近いモデル)へと発展させる、中期的なビジネスにつなげていく構想です。
3つ目の戦略について教えてください。
最後3つ目は、保険事業ですね。今、がんの治療というのは先端医療というのが進んでいて、日本の医療が非常に遅れているのです。アメリカ人と日本人のがんの死亡率はもう逆転して、アメリカ人の方ががんで死ななくなっていて、日本人ががんで死亡する率が高くなっているということです。
なぜかというと、日本のがん治療の方法が遅れているからです。切って開けて取るという方法を取っていますけど、アメリカだと重粒子線とか陽子線治療といって、レーザーで焼き切っているのです。
だからわざわざ体を切開しなくても、体内にあるがん細胞だけをピンポイントでレーザーで治療すればいいというのが進んでいるのですが、これが日本で標準治療にならないのです。既存の医療体制との調整が必要だという理由なのですが。
こういったドラッグラグとか医療ラグというのがありまして、日本に入ってくるまでに時間がかかるのです。それに対して、医療はあるけど保険が使えていないということに対処するためには、そういう先端医療に対する保険制度を作る必要があるのですが、日本人のための保険を日本人が金融庁で作ることができないのです。
国内では新しい保険を認めないのですが、アメリカの保険が輸入されることはOKなのです。
だから私はナスダックに上場したので、アメリカで保険会社の買収を行い、その日本人が先端医療を受けられる保険を商品設計しているのが狙いです。この3点です。
最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。
私たちはこれまで、リラクゼーションという文化をゼロから創り上げてきました。その現場で培った知見と、OpenAI共同創業者であるサム・アルトマン氏の革新的なテクノロジーを融合させ、今、新しいヘルスケアの未来を創っていきたいと考えています。
私たちが目指すのは、誰もがより健やかに、自分らしく生きられる未来の実現です。リラクゼーションのパイオニアとしての誇りを胸に、これからはヘルステック・ウェルネステックの分野で、さらに社会貢献していきたいと思っております。





