目次
マグネシウムの重要性を社会に根付かせる
まずは御社の事業内容について教えてください。
オーガニックサイエンス株式会社では、マグネシウムの研究とマグネシウム製品の開発に取り組んでいます。実は私自身、もともと栄養についてはあまり知識がありませんでした。しかし、事業で窮地に陥り、精神的に崩れてしまった時期にマグネシウムに助けられたという経験があり、それがきっかけで研究を始めました。
その後、様々な医療機関と連携するようになり、多くの方との出会いを通じて、少しずつ会社を成長させてきました。
具体的にどのような状況だったのでしょうか。
当時、双子が生まれて子供の数が倍になったばかりで、家に帰ると子どもたちが口を開けて待っている状況でした。それにもかかわらず、私は3年間ほど売上を上げられず、毎月赤字を出し続けていたのです。ある時、急に「明日どうしていいかわからない」という恐怖に襲われました。絶望のような真っ暗な気持ちになり、全く眠れなくなってしまったのです。
10日間以上ほとんど眠れない日々が続き、全身が筋痙攣を起こすようになりました。最終的には前向きなことを一切考えられない状態になってしまいました。
そこからどのようにマグネシウムと出会ったのですか。
その時期に、たまたまマグネシウムをしっかり摂取する状況になったのです。現在、一緒に製品開発を行っているオーストラリア人の共同創業者がおりまして、彼は欧米の栄養事情に詳しく、マグネシウムには体を緩める作用があることを教えてくれました。
マグネシウムは体内の炎症を抑えたり、緊張を和らげたりする働きがあります。しかし、忙しくしたりストレスが溜まったりすると、かなり消耗して尿から出ていってしまうのです。日本人はマグネシウムの重要性を知らない方が多く、私自身も全く知りませんでした。
マグネシウムをしっかり摂取するようになってから、不思議と筋肉が落ち着き、少しずつ眠れるようになってきたのです。この経験から、マグネシウムについて深く調べるようになりました。
マグネシウムは具体的にどのような働きがあるのでしょうか。
興味深いのは、筋肉の動きがカルシウムとマグネシウムのバランスで成り立っているということです。カルシウムは筋肉をキュッと引き締める作用があり、マグネシウムは筋肉を緩める作用があります。このバランスが崩れてしまうと、筋肉が緊張した状態になってしまうのです。
日々生活しているだけでも、エネルギーを生成する際にマグネシウムは大量に使われています。さらに、ストレスがかかると尿から排出されたり、汗から出ていったりするため、常に消費が激しい栄養素なのです。マグネシウムが不足すると交感神経が優位になってしまいますが、適切に補給することで、副交感神経を優位にして、リラックスした生活を送りやすくなります。
前職での失敗を経て、マグネシウム研究の道へ
これまでのご経歴についてお伺いできますか。
私は20年以上仕事をしていますが、オーガニックサイエンスが5社目の会社になります。1社目から3社目は、オンラインで子ども用品を販売する会社でした。そのため、オンラインでのプロモーションやお客様との関係構築は得意だったのです。
7年ほど前に、前のビジネスパートナーと別れて独立し、全く違うことに挑戦しました。私の地元である広島県の市町村と組んで地域活性化に取り組んだり、日本の化粧品ブランドを作ってベトナムに輸出する仕事などに携わりました。しかし、これらの事業はうまくいきませんでした。得意ではない分野に挑戦したこともあり、精神的に病んでしまった時期がありました。そこでマグネシウムに救われたことが、今の事業のきっかけになっています。
会社自体は2025年現在で4期目のまだ若い会社ですが、最初の製品を開発したのは2020年5月です。開発準備期間も含めると、約7年取り組んできました。
食事からマグネシウムを摂取するのは難しいのでしょうか。
マグネシウムは私たちの体内では作られないミネラルで、外から摂取するしかありません。海藻類や玄米にマグネシウムが豊富に含まれていますが、白米に精製してしまうと8割から9割のマグネシウムが失われてしまいます。日本人は1970年代頃から白米を食べることが一般的になり、毎日摂取するマグネシウム量は確実に激減しています。こうした食生活の変化が、マグネシウム不足の原因になっていると考えています。
製品開発の苦労。安定性と安全性の両立を追求
御社の主力製品について教えてください。
当初、私自身はサプリメントと塗るタイプのクリームでマグネシウムを摂取していました。ただ、サプリメントで摂取すると下痢になりやすく、腸での吸収率が悪いという課題がありました。そのため、塗るタイプのものが非常に私に合っていると感じたのです。
しかし、海外製品は匂いがきついなど、成分をもう少し工夫した方がいいと感じるポイントが多くありました。日本市場を見てみると、マグネシウムに関する知識も製品もほとんどなかったため、「それなら自分で作ってみよう」と考え、最初の製品である「マグバーム」を開発したのです。
製品開発はどのように進めたのですか。
前職で化粧品を開発した経験があり、化粧品工場の社長を何人か知っていました。その方々に試作の依頼をしたのがきっかけです。
しかし、日本でマグネシウムを扱ったことがある工場はほとんどなく、非常に苦労しました。クリームは油分と水分を混ぜて作りますが、そこにマグネシウムを入れると安定性が非常に悪くなります。100%天然で安全なものを目指すと、なかなか安定性を保つのが難しかったのです。様々な試行錯誤の結果、水分を少なくしてバーム状にすることで、安定性の問題を解決しました。
また、マグネシウム自体が肌に刺激が強い成分です。刺激を緩和するため、米ぬか油や蜜蝋、シアバターなどの油分をブレンドして、保湿効果も高めながらマグネシウムの刺激を和らげる処方にしています。
工場の方々にお願いして試作を繰り返し、「やはりダメだ」ということを何度も経験しました。相手の方の忍耐力や理解力があってこそ実現できた製品だと思っています。
安全性についてはどのようなこだわりがありますか。
マグバームもマグリポ(飲むタイプのリポソーム化マグネシウム製品)も、子どもが口に入れても大丈夫な成分にこだわっています。実際、マグバームは小さなお子様が触れる可能性を考え、天然由来成分を中心に、万が一口元に触れても慌てる必要のないよう配慮した処方にしています。どなたにも安心して使っていただけるよう、安全性には最大限配慮しています。
顧客の声で進化し続ける製品づくり
御社の製品を使用されているのはどのような方が多いのですか。
現在は40代、50代くらいの女性が非常に多く、健康意識が高い方が中心です。様々な不定愁訴を経験されて、栄養について調べていくうちに、「マグネシウムって実はこんなに大事なんだ」と気づいていただき、製品を使っていただいています。
ただ、こうした方以外では、「マグネシウムって何?」という方がまだまだ多く、本当に0か100かという状況です。男性も含めて、マグネシウムの重要性を知っていただくことが今の課題です。
最近はヨガやピラティスのインストラクターの方々にも広がっているそうですね。
マグネシウムは精神的にも肉体的にもバランスをとる役割があります。ヨガやピラティスも、活動を通じてバランスをとるという点で、マグネシウムの役割と非常に似ていると感じています。
ヨガジャーナルさんに製品を使っていただく機会があり、ヨガインストラクター100人の方にヨガジャーナルアワードの大賞に選んでいただきました。今年その賞をいただいたことで、ヨガやピラティスのインストラクターの方々の間でも使っていただく機会が増えています。
顧客の声はどのように製品に反映されていますか。
毎日、お葉書だけでも10通以上いただきますし、メールや電話など様々な形で何十件ものお声をいただいています。「こういった製品を作ってほしい」「この成分を加えてほしい」「この香りを加えてほしい」といった意見が多く寄せられます。
また、ご満足いただけないお客様には100%返金させていただいており、その代わりに理由をお伺いしています。
いただいたご意見や満足いただけない理由に優先順位をつけて 、試作を作り、モニタリングを行い、製品の改善につなげるということをずっと続けています。マグバーム自体も2020年5月の発売から、これまでに10回以上小さな改善を重ねてきました。2025年6月には初めてパッケージデザイン含めて大きなリニューアルを行いました。
お客様の声によって変わり続ける製品づくりは、今後も続けていきたいと考えています。
競合他社との差別化についてどのようにお考えですか。
最近、当社の製品に似た製品が次々と出てきています。競合が増えること自体は、マーケット全体が広がると考えれば、むしろ私たちの成長にもつながります。
私自身のビジョンは「マグネシウムの重要性を社会に根付かせる」ことです。「みんながマグネシウムを使うのが当たり前だよね」という状況になっていけば、消費者の数自体が増えますから、業界全体にとってプラスになると思っています。
医療機関、大学、アスリートとの連携で信頼性を高める
飲むタイプの「マグリポ」についても教えてください。
私自身も長年、飲むタイプのサプリメントを使用していました。ところが、ある時に自分自身の細胞内のミネラル値を測定する機会がありました。すると、私自身のマグネシウム値がかなり不足しているということが分かったのです。それだけ気をつけていたにもかかわらずです。
そこで様々な先生方に相談し、リポソームというリン脂質を使った技術を採用することにしました。リポソーム化は元々、ドラッグのデリバリーシステムとして発達した技術です。日本で初めて 、マグネシウムをリポソーム化した製品が「マグリポ」です。リポソーム技術を用いることで、一般的なマグネシウム製品と比べて、よりスムーズに摂り入れられることを目指して開発しました。
今後の展開として、どのような層に広げていきたいとお考えですか。
大きく3つのターゲットがあります。
まず、現在の主要顧客である40代、50代の女性に加えて、若年層の健康意識の高い女性にも知っていただきたいと考えています。マグネシウムは女性特有の悩みにも深く関わっているため、女性に注目されることが増えているのです。
2つ目は、ビジネスパーソンです。仕事で忙しく、ストレスがかかりやすい方々は、マグネシウムが不足している方が非常に多いと感じています。
そして3つ目が、アスリートの方々です。運動によってマグネシウムは大量に消費されますので、こうした方々にも積極的に知っていただきたいと考えています。
実際にアスリートの方々にも使われているのですか。
最近はトレーナーの方々が勉強される機会が増え、そこから広がっています。トップアスリートの方々にも使っていただく機会が非常に増えました。ラグビーの日本代表、女性バスケットボール日本代表、女子レスリング日本代表、男女ゴールボール日本代表など、様々なスポーツの現場で使っていただいています。
現在、スポーツタイプの製品開発にも取り組んでいます。
医療機関との連携についてもお聞かせください。
現在、250以上(※2025年11月現在)の医療機関やクリニックと提携し、製品を取り扱っていただいています。これをさらに広げていき、医療の現場でしっかり使っていただくことを目指しています。
また、大学の研究機関とマグネシウムの基礎研究を継続しています。エビデンスをしっかり蓄積していくことで、より多くの方に信頼していただける製品を作り続けていきたいと考えています。
特にアメリカでは、2023年の健康・フィットネス系サプリメント分野において、Googleで最も検索されているのがマグネシウムなのです。これが日本でも必ず注目されるようになると確信しています。
チャレンジできる環境を作り、スタッフと共に成長する会社へ
最後に、今後の会社のビジョンについてお聞かせください。
私の一番の願いは、マグネシウムの重要性を社会に根付かせることです。ここをしっかり追求していきたいと考えています。
そのための手段として、医療機関との提携をさらに拡大し、臨床現場での使用を増やしていきます。また、大学の研究機関との基礎研究を継続し、エビデンスをしっかり蓄積していきます。そして、トップアスリートの方々と協力しながら製品を改善し続けるというサイクルを回していくことが、ビジネスとして最も重要だと考えています。
もう一つ、会社全体で考えた時に、スタッフにチャンスを与え続けられる組織にしたいと思っています。私自身、今でも失敗することはありますが、トライしていくことが非常に重要だと考えています。
常にチャレンジできる環境を作りたいのです。トライして失敗があったとしても、その失敗から得られるものによって、また次の機会が生まれてきます。これを全てのスタッフが共有し、充実した生活を送れるような会社にしていければと考えています。
心も体も、健康と元気があってこそ、日々の活動ができるのですから。





