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大手通信会社から外資系コンサルへ、そして独立への道のり

まずは御社の創業から現在に至るまでの経緯と、照井さんご自身の略歴を教えていただけますか?
私は1998年に大学を卒業後、当時のNTT(現在のNTT西日本)に入社しました。最初は営業を担当していましたが、最終的には西日本本社の人事部で人事制度の企画などを手がけていました。
思うところがあって転職を決意し、当時のベリングポイント(現在のPwCコンサルティング)に入社しました。そこで2年ほど、人事コンサルティングチームでさまざまな企業の人事コンサルティングを担当しました。
その後、現在の会社を創業する前に、株式会社エスユーエスという人材派遣をメインとする会社でコンサルティング事業の立ち上げを11年ほど経験しました。そして2017年1月に現在の会社を設立し、今年で9期目を迎えています。
現在の会社では、人事コンサルティングと人材育成を軸とした事業と、ITコンサルティング事業の2つの領域で事業を展開しています。
創業当初は一人からのスタートだったのですね。従業員を雇用して組織化していこうと思われたタイミングはいつ頃でしたか?
実は、最初から組織を作ろうという思いはありました。会社を作った理由が「何か自分で世の中に残したい」という思いからで、それが事業という形になったのです。事業である以上、一人でやっていても事業とは言えないと思っていましたので、どこかのタイミングで人を雇いたいと考えていました。
ただ、具体的に何をするかというアイデアはありつつも、なかなか具体化できていませんでした。また、正直、お金が全くなかったので、まずはしっかり資金を確保しなければと思い、最初の数年間は自分でコンサルティングをしながら資金を貯めていました。
その後、形が整ってきてから少しずつ人を採用し、現在は9名ほどの会社になりました。
創業初期の最大の課題は「人が来てくれないこと」

これまでの経営で最も苦労されたことは何ですか?
とにかく最初、人が来てくれなかったことです。
創業から2年ほど経った、3年目くらいから本格的に人を採用して一気に事業を拡大しようと思った時に、いろいろな人に声をかけました。自分がずっとビジネスをやってきて「この人と仕事がしたい」と思う人が何人もいたので、そういった人たちに声をかけたのですが、みんな「面白そうですね」と言ってくれるものの、やはり来てくれませんでした。
理由はとても当たり前で、みんなそれなりに良いポジションにいるのです。一緒にやってきた仲間や同世代の人たちなので、若い人でも30代後半、上の方は50代くらいの方々ばかりでした。今のポジションを捨てて、うちのようなベンチャーでゼロから一緒にやりますというのは、家族もいるし、いろいろな生活もあるので、やはりできないのです。
それをどのように解決されたのですか?
ある方にアドバイスをいただいて、「副業でやってもらったらいいのではないですか」という提案をもらいました。「週一回からでも来てもらえないか」と声のかけ方を変えると、話を聞いてくれる人が出てきました。
でも、もう一つ課題が出てきました。多様化の時代ということもあると思うのですが、みんなやりたいことがあるのです。例えば「今までかなり働いてきたので、家族との時間を大切にしながら働きたい」とか、「両親の介護をしながら、子どもの面倒も見ながら仕事をしたい」といった要望です。
そうすると、このような優秀な方々なのですが、普通の会社だとやはり出社しなければいけません。それができなくて、なかなか良いチャンスがないという方が一定数反応してくれることに気づいて、「じゃあ、そういう人たちでも働けるような会社にしたらいいのではないか」ということで、フルフレックスかつフルリモートという形で、働ける仕事を作っていこうと考えました。
多様な働き方を実現する独自の組織運営
御社の強みや魅力について教えてください。
うちの会社にいる皆さんは、みんなとても自分で考えて行動してくれる人たちばかりです。これは、会社の働き方に起因しているところもあると思います。
創業時から基本的にはフルリモートかつフルフレックスなのです。基本的には誰も管理をしません。逆に言うと、自己管理ができる人でないと、できない仕事だと思います。
最近、大手企業でリモートワークをすると、パソコンを開いているかどうかをチェックしたり、カメラの前に映っていないと何分以上席を外したらカウントアウトするようなシステムがありますが、そういったものは一切ありません。
基本的には自己申告で、アウトプットで評価します。コンサルティングの仕事があれば、お客様との案件に対して何が出せたのか、何かのビジネスを立ち上げる企画をしていたら、そこに向けたアイデアや企画書がどう上がってきて、それがお客様の課題解決につながったのか、そういうところでしか評価しません。
長い時間働いてもアウトプットが出なければダメですし、逆に短時間でも期待以上のアウトプットが出れば、誰も何も言わない、むしろ素晴らしいという会社です。
自分で考えて行動できる人はとても居心地が良いと思いますが、誰かから指示をもらわないといけない、管理してもらわないとだめだという人には、とても居心地が悪い会社だろうと思います。
採用はどのように行われているのですか?
面白いことに、HR系とITコンサル系の2領域で事業をやっているのですが、HR系の方は結果的に、みんな知り合いや紹介された人なのです。一方、ITの方で今働いてくれているメンバーは、全員インディードの募集を見て、一度も会わずに採用しています。
実際、最近入社してくれた方で、2か月ほど経った方がいますが、まだ一度も会っていません。本社は京都なのに、その方は埼玉にお住まいで、物理的に遠いこともあります。
HR領域とIT領域、二つの専門性で企業変革を支援

現在の事業内容について詳しく教えてください。
現在は人事コンサルティングとITコンサルティングの2つの領域で事業を展開しています。
HR領域では、特に「じぶん戦略」という考え方を軸とした「クロスキャリアマネジメント」という新しいマネジメント手法を提案しています。これは、会社が決めたビジョンに社員が従うのではなく、会社のやりたいビジョンと社員のやりたい姿やビジョンが、どこでクロスするのかをお互いが明確にして、その接点を作っていくという考え方です。
ITコンサルティングでは、特定の経営管理ツールに特化した事業を共同パートナーと展開しています。リモートで対応できる案件が多く、週1回の打ち合わせで、あとはこちらで進めるということができるので、効率的にプロジェクトを進めています。
他社との差別化ポイントはどこにありますか?
HR領域では、専門性を持った人が意欲的に働いている比率が高いということです。例えば、もともと「日本の人事部」というHR業界のトップ媒体で営業をしていて、HR領域に非常に明るい人材も働いています。
また、HR系事業の統括をしてくれているメンバーは、私のコンサル時代の同僚で、外資系コンサルティング会社を渡り歩いて、戦略やHRをずっとやってきた経験を持っています。
人事の領域で専門性を持っている人が、こういう働き方ができるということで来てくれています。この働き方を気に入ってくれて、しっかり結果を出そうと自分で考えて行動してくれる人たちばかりです。
ビジネスにおいて照井さんが大切にされている考え方や姿勢を教えてください。
会社と社員が両方ともありたい姿を実現するためには、どうしたら良いのかということを常に考えることを、とても大事にしています。
もともと私自身は、自分でいろいろ切り開いていくタイプでした。以前、役員をしていた時なんかは、一人で「これをやるぞ」と突っ走って、後ろを振り返ると誰もいないということが結構ありました。
でも、特に今の時代は、世の中のニーズが広がりすぎて、変化がどんどん起こっていく中で、一人でキャッチアップし続けるのは無理だと思ったのです。そこを把握し続けないと、これだけ優秀なメンバーを引っ張っていくのは不可能です。
実際、そういう経験も以前にしていて、新しい事業を立ち上げようという時に、現場はこういうことをしたい、でもトップはこうしたい、間に挟まれる役員という立場になって、なかなかうまく立ち上がらないということがありました。
そういうことを知っているがゆえに、自分のトップとしての推進力だけでやってしまった時に、果たして本当にできるのかという懸念がありました。なので、そこは変えていかなければいけないと思い、現在のスタイルに至っています。
社員がどうありたいと思っているか、なぜそう思っているのか、また会社が示した方向性に対してこうしたら良いと思っていることも、とても重要視して聞くようにしています。
業界の変化を見据えた戦略と今後のビジョン

今後、業界がどのように変化していく中で、御社はどう対応していく予定ですか?
HR領域については、採用の仕方や社内にいる方々のマネジメントのあり方が、これからどんどん多様化していくと思います。
以前は、特に中堅中小企業では、キャリアのラインが一本だったのです。一般社員から主任、係長、課長と上がっていかないと偉くならない、給料が上がらないというシングルラインの制度の会社が今でも多いのですが、大手企業を見ていると専門職制度や時短勤務制度など、いろいろな働き方を選べる時代になってきています。
そういうものが変わっていかないと、日本の会社は成り立たないと思っています。理由はシンプルで、人がいないからです。優秀な人は取り合いになっているからです。
ITコンサルティング領域については、従来の外資系コンサルティング会社でやっているような方法論的なコンサルティングは、そのうちなくなっていくと思っています。AIによって、ベーシックな骨子を作るところなどは、ほとんどタスク量がなくなってくると思います。
残るのは、そういうものを読み解いて、この会社の状況を見た時に、これをどう落とし込んでいったら会社がうまく回るかという経験値を持っている人や、相手のことを理解してうまく落とし込んであげるコミュニケーション能力を持った人です。
今後の会社の将来設計についてはどのようにお考えですか?
上場については正直、考えていません。前職で上場プロセスを経験したのですが、とても大変でした。上場は一つの手段ではありますが、優先度は高くありません。
海外展開についても、HR領域については現時点では考えていませんが、ITの方は世の中の流れで必然的に海外に出ることになると思います。実際、今まで海外案件をやったことがなかったのに、少しずつやり始めていますし、英語を話せる人も採用しています。
一番やりたいことは、日本の会社の人の働き方を変えていきたいということです。みんなが自分で考えて、自分でどんどん「こうした方が良いのではないか」と動いてくれるような、そんな働き方ができる世の中にしたいのです。
例えば、今コンサルティングをさせていただいている会社を見ていると、「上が決めたから」という理由で下に指示を出すマネージャーが本当に多いのです。問題が起こった時に、誰がこれを拾って解決するのかという時に、みんな拾わないで押し付け合ったりしています。
そうではなくて、失敗しても良いから、誰かが前向きになってやってくれたら応援しよう、もっと働くということに対してポジティブにみんながなる、そんな世の中になってほしいと思っています。
“働く”を通じてワークキャリアもライフキャリアも含めた、トータルのキャリアがみんなもっと生き生きするような世の中にしたい。そのために私たちが何をできるかをみんなと考えてやっていって、5年後、10年後にそういう世の中に変わるきっかけの一つになれたと思えたら良いなというのが、私たちのビジョンです。
一緒に変革に取り組む企業を募集

最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
私たちがHR領域でやろうとしていることは、少し変わったアプローチだと思います。毎年、HRのイベントで講演をしているのですが、話をすると大体「面白いですね、良いですね」という反応をいただきます。
でも、実際にやりますかとなると、「上司を説得できるかな」「会社的に今はどうかな」という「まだ早いかな」が結構多いのです。変革なので、なかなか「良いですね」で終わってしまう結論がまだ多いのが現状です。
そこで、実際にやってみたいという会社がいらっしゃったら、ぜひ一緒にやってみませんかということをお伝えしたいと思います。
私たちは無料で「じぶん戦略」のカリキュラムを提供したり、AI無料ビジョン診断「ビジョンメイカー」なども公開していますので、世の中の人にぜひ自由に使っていただければと思います。
一緒に日本の働き方を変えていける仲間を、心よりお待ちしています。





