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インターネット業界の黎明期から歩んできた20年以上のキャリア

まず、御社の創業から現在に至るまでの経緯と、社長ご自身の経歴について教えていただけますでしょうか。
私は早稲田大学を卒業後、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(現CARTA ZERO)という会社に、初の新卒として入社しました。
当時のサイバー・コミュニケーションズは、電通とソフトバンクのジョイントベンチャーとして設立された会社でした。私がそこに入社を決めた理由は、まだ黎明期だったインターネット業界に強い興味を抱いていたからです。
入社後2年間は東京で勤務し、3年目からは九州支社の立ち上げ責任者として九州に赴任しました。その後2年間で支社を自走できる状態に作り上げました。
その後のキャリアの変遷はいかがでしたか。
もともと描いていたキャリアプランとして、まずはインターネット広告を学び、次にマスメディア全般を扱えるようになって、その後新しいキャリアに挑戦したいと考えていました。そこで転職を決意し、外資系のBBDO JWESTという会社に移りました。
BBDOでは、主にアジア地域でのPR業務を担当しました。こちらでも部署の立ち上げから始まり、新規顧客獲得営業に取り組み、案件が増加してきたタイミングで中国に移住。現地で事務所を一人で立ち上げました。
その後、中国で独立するか日本に戻るかという選択肢があったのですが、前職時代から交流のあった加藤公一レオ氏が新たに会社を設立することになり、その創業メンバーとして参画しました。
創業メンバーとしてはどのような業務を担当されたのでしょうか。
その会社では、コンサルティング部門をはじめ、システム開発、総務、財務など、ほぼすべての部署の立ち上げ業務を担当しました。福岡と東京の両オフィスを立ち上げ、5年間勤務しましたが、会社の方針と自身の目指す方向性に違いが生じるようになり、それを機に退職し、自らの会社を設立しました。
お客様との関係性を重視した独立への道のり
独立された際の状況はいかがでしたか。前職の会社は後に上場されたと伺いました。
確かに前職の会社は、私が退職してから約8年後に上場を果たしました。私は在籍5年で退職したため上場による利益は得られませんでしたが、そもそもあまりそこに興味はありませんでした。それよりも、自分が本当にやりたいことを追求したいという気持ちの方がずっと強かったです。
独立後の顧客開拓はどのように進められたのでしょうか。
実は、もともと独立するつもりがなかったため、独立後に何をやるかについて明確なプランがあったわけではありませんでした。
しかし、ありがたいことにSNSがあったので、独立の報告をSNSに投稿したところ、そこから今後の確認も含めて、多くの方お問い合わせをいただくことができました。
新規顧客の獲得も順調だったということですね。
新規での営業はほとんど行っておらず、、ありがたいことに、独立から半年間でお付き合いを始めたお客様が、10年経った今でも売上の約8割を占めています。これは他の会社とは大きく異なる点だと思います。
途中で新規のお客様も入られていますが、その新規顧客のほとんどが、既存のお客様企業から転職された方か、SNSでの紹介によるものです。つまり、営業による新規開拓ではなく、既存顧客との関係性の中から自然に事業が拡大できました。
他社との明確な差別化「プライベートエージェンシー🄬」という発想
御社の事業内容について、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
弊社の事業は非常に幅広く、一言で説明するのが難しいのですが、インターネット広告を中心としたマーケティング支援を行っています。
具体的には、広告の運用から制作、タグの設定、SEO対策、システム関連まで、お客様のニーズに応じて幅広く対応しています。
特に弊社は、D2C(Direct to Consumer)領域のお客様が多いため、企画段階から参入し、商品が売れる導線設計、CRM(顧客管理)、そして費用対効果の最適化まで、お客様が自社では対応しきれない部分まで含めて、すべてを総合的にサポートしています。
いわゆるウェブマーケティングの領域には多くの事業者がいらっしゃいますが、御社と他社の差別化ポイントはどのような点でしょうか。
最も大きな違いは、私たちが広告運用を目的とするのではなく、お客様と一緒に事業を大きく成長させることを目的としている点です。
弊社では「プライベートエージェンシー🄬」という商標を取得しており、これはプライベートバンクと同じような発想です。プライベートバンクがお客様の資産価値を最大化することにコミットするのと同様に、私たちはお客様の事業価値を最大化することに全力で取り組んでいます。
他のウェブマーケティング会社との具体的な違いはどのような点ですか。
他のウェブマーケティング会社の多くは、キャンペーンが終了したり、お客様の事業が一時的に不調になったりすると、関係が希薄になってしまう傾向があります。要するに、調子の良い時だけ関わり、困難な時期には距離を置くということが起こりがちです。
しかし、私たちはまったく違います。お客様の良い時も悪い時も含めて、その波を一緒に乗り越えることを重視しており、実際に10年間そのスタンスを貫いてきました。
料金体系についても他社と違いがあるのでしょうか。
料金体系自体は、他社とそれほど大きな違いはありません。ただし、私たちはその会社にリソースを固定するため、月額の費用をいただいておりお客様のチームにリソースを増やすイメージで契約していただく形を取っています。
投資の部分については変動制になっており、事業が好調な時期は投資が加速し、厳しい時期は投資を抑制します。重要なのは、この投資変動部分についても私たちが責任を負うということです。
業績が落ちている時は私たちの責任であり、業績が向上している時は私たちがいるからこその成果だという考え方で、お客様と長期的な関係を築いています。
経営者として学んだ成功と失敗の教訓

これまでの経営経験の中で、特に印象深い成功体験と失敗体験があれば教えてください。
成功体験として挙げるとすれば、広告・マーケティング業界では、成果が出ている時だけお客様に寄り添うことが一般的でした。しかし、私はそのやり方に違和感を覚えていました。だからこそ、創業当初からお客様に寄り添い、一緒に成長することを目指し会社を立ち上げたのです。実際に10年間事業を継続し、創業からのお客様と共に歩んでこられたことは、私にとって何よりの成功体験です。
失敗体験についてはいかがでしょうか。
失敗体験については、数え切れないほどありますので、特定するのが難しいほどです。
強いて言うなら、創業から約5年間、仕事の内容よりも社内の人材マネジメントや組織運営の部分で非常に苦労しました。採用活動や組織体制の構築など、この分野での取り組みが大きな失敗だったと反省しています。
それまでのサラリーマン時代には、自分の部下を辞めさせてしまった経験がありませんでした。しかし、自分の会社では予想以上に多くの人が辞めてしまい、「なぜこれほどまでに人が辞めるのか」と悩んでいた時期は非常に辛い経験でした。
経営者として最も大切にされている考え方や姿勢はどのようなものでしょうか。
「結果に誠実に向き合うこと」、これに尽きると考えています。
お客様の事業が厳しい局面に入ると、通常であれば投資を抑制されることが多いのですが、私はそのような状況でもストレスを感じたことがありません。
なぜなら、お客様と対等なパートナーシップを築けていることが、私たちの最大の強みだからです。従来の主従関係ではなく、共に事業を育てる存在として向き合うことで、どのような困難な状況でも一緒に乗り越えることができるのです。
AI時代におけるマーケティング業界の変化と対応
ウェブマーケティング業界の今後のトレンドについて、どのようにお考えでしょうか。
私たちの業界は、明確にAIがどのように導入されるかによって大きく変化していく業界だと考えています。
AIの導入により、従来人間が行っていた多くの業務を自動化できるようになり、業界の構造自体が変化していくことが予想されます。
AI導入に対してはどのような対応を考えていらっしゃいますか。
AIが普及することで、従来人間が担っていた業務の多くが不要になると予想されます。しかし、最終的にはリアルな責任を負うのは人間にしかできないことです。
したがって、業界のトレンドに合わせて効率化を追求しつつも、「人間としての信用と信頼関係を構築していくこと」は、これまでと全く変わらず重要だと考えています。
具体的にはどのような変化を想定されていますか。
インターネット業界は、PCから始まって携帯電話がメインになり、次にスマートフォンが主流となり、現在はAIの時代を迎えています。このように、定期的に大きな転換点が訪れる業界です。
マーケティングという分野の性質上、このような変化は今後も続くものと考えており、その変化に適応していくことが重要だと捉えています。
10年の節目を迎えた組織改革への取り組み
今後の会社の方向性について、短期・中長期でどのようなビジョンをお持ちでしょうか。
組織構造については、創業から10年が経過した現在、私がトップとして走ってきた10年間を一度終わらせようと考えています。
次の段階として、現場で活躍している若いメンバーたちが、それぞれ独立した組織として自立的に動けるような体制を構築したいと考えています。
各組織が自立して運営される中で、各社が個別に持つ必要のない機能については、持株会社として私たちが提供する。そのような形が次に目指すべき姿だと考えています。
従業員の方々への権限移譲についてはどのようにお考えですか。
私個人としては、もう自分がお金を稼ぎたいという欲求はほとんどありません。それよりも、次世代のメンバーたちがいかに社会に価値を提供し、適正な報酬を得られる環境を作れるかということに関心があります。
また、各メンバーがどのような形で決裁権を持っていくかということも重要な課題です。事業部が増加していく過程で、事業部ごとに分社化し、従業員にオーナーシップを持たせるような社内分社制度なども選択肢として考えています。
独立させることに対する不安はありませんか。例えば、優秀な人材が外部に流出してしまうリスクなどです。
それについては、弊社の事業領域が多岐にわたっているため、一人で同じレベルの仕事を継続することは困難だと考えています。
私たちが手がけている業務の範囲は非常に広く、総合的なサポートを提供しているからこそ価値があります。そのため、個人で独立したとしても、同等のサービスを提供することは難しいでしょう。
次世代を担う人材への想い

最後に、PRしたいことがあればお聞かせください。
この創業10年を節目として、企業理念を「誠実な想いが、まっすぐ届く社会をつくる。」という形に刷新しました。
これは、自社の売上向上よりも、お客様と一緒に並走できるマーケティングを実現したいという想いを表しています。
現在働いているメンバーの約9割が未経験からスタートし、私たちが育成してきた人材です。ただし、私たちが取り組んでいる領域の特性上、一緒に働ける人材を見つけることに苦労しているのが現状です。
どのような人材を求めていらっしゃいますか。
マーケティングや広告でお金を稼ぎたいということよりも、お客様のビジネス自体を一緒に育てていきたいと考える人材を常に探しています。
これからの時代を考えると、このような価値観を持った人材の必要性はさらに高まると考えています。そのような志を持った方々と一緒に価値を創造していきたいと考えていますので、興味を持っていただいた方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。