サンワード株式会社|代表取締役 池田 智幸

廃棄物に新たな命を吹き込む - 地球環境×モノづくりへ挑戦し続ける

サンワード株式会社
代表取締役
池田 智幸氏

悩みながらも歩み始めた経営者の道



最初に、サンワード株式会社の会社概要とこれまでの沿革についてお聞かせください。

会社としては、1986年に設立されたのが「サンワード株式会社」です。私は創業者ではなく、もともとは商社に勤めていました。そこでは主に韓国・台湾・中国などでカバン用の生地を製造し、それを日本に輸入して販売するという仕事をしていました。その頃は、まだ製品そのものを海外で作るのは一般的ではなく、日本国内で縫製されるのが当たり前だったんです。しかし「これからは海外でも製品づくりができる」と感じ始めていて、自分でもそういう会社を立ち上げたいと考えるようになりました。

1999年、同じ会社で働いていた女性アシスタントと2人でその準備を進めていたんです。ただ、当時は資本金1,000万円ないと会社が設立できなかったので、サラリーマンをしながら資金を貯めていましたね。

そんな時「サンワード」の創業者の人から連絡をいただいたんですね。「独立するって聞いたけど、うちの会社を引き継いでもらえないか」とお話をいただいて。少し悩みましたが、いきなりゼロから始めるよりも安定感があるということで、株式を51%取得するかたちで1999年に社長として就任しました。

就任直後に立ちはだかる壁

就任直後に立ちはだかる壁
社長就任当初、どのような壁に直面されましたか?

人員不足です。就任時は社員が3名でした。しかも私より年上ばかりで「いきなり若いやつが来て社長かよ」みたいな空気もあって、2人はすぐに退職してしまいました。そこから人を集め直し、当初は中国や韓国で製品を作って輸入していました。

しかし次第に「日本製で作れないか」という問い合わせも増えてきて、それならば、と国内での製品づくりにも取り組むようになったんですよね。とは言え、当時の外注工場はかなり力を持っていて、納期を守ってもらえなかったり、途中で値上げを要求されたりと、正直やりにくさも感じていましたね。


どのようにして直面した壁を打開していったのでしょうか?

「このままでは信頼も利益も失う」と思い、いずれは自社工場を持たなければと考えていた矢先、15年前に外注先の縫製工場が主要顧客の倒産の影響で経営危機に陥りました。その時「じゃあ、いっそうちで買い取ろうか」と決断し、工場ごと引き受けました。当時の社長には「明日からは工場長としてうちで頼むで」と言って引き続き残ってもらっています。

引き継いだ当初は、ミシンを踏める人が2人しかいなかったので、そこから人材を募集して、今では約25~26名が働く体制になっていますね。コロナ禍や為替の変動なども経て、現在は国内縫製が売上の半分を占めるようになりました。


念願の自社工場を持ったことでどのような変化がありましたか?

以前は圧倒的に海外製が多かった中で、自社工場を持った運営により、「日本製」の価値を改めて大事にするようになったんですね。
とは言え、OEMの仕事はどうしても「お客様の指示通りに動く」スタイルなので、自分たちの思いや提案が通りにくい面もあります。例えば、ブランドネームの位置がたった5ミリずれただけで全数返品になったこともありましたね。
私たちとしては、お客様が笑顔になる商品ならそれは不良品ではないと考えているんですが、OEMではそうもいきません。そうした経験を重ねる中で「自分たちの作りたいものを作ろう」と考え始めたんです。

苦悩の末、「誰かが喜ぶもの」をカタチに

苦悩の末、「誰かが喜ぶもの」をカタチに
OEM中心から自社企画へと舵を切るきっかけについて詳しく教えてください。

OEM中心の事業に違和感を感じていた頃、取引先の会社から「大量の消防用ホースの廃材が出て困っている」という話を聞きました。ちょうど、自分たちの企画で商品を生み出す道を模索していた時期だったので「この素材、うちで使えるんじゃないか」とひらめきました。
そこからホースを少し分けてもらい、1年かけてバッグにアップサイクルしました。当時は、SDGsやアップサイクルという言葉もまだ浸透していませんでしたが、ものづくりに意味を持たせる第一歩になったと思いますね。


当時の手応えはいかがでしたか?

最初の催事では、高島屋さんが「面白いね」と声をかけてくれたことで出展が決まり、実際にお客様の反応を見て手応えがあったんですね。「消防ホースでできているなんて」と驚く声や、12色のホースを使用している事に感動する様子は、自社商品だからこその喜びでしたね。
私にとってカバンは、単なる道具ではなく“会話が生まれるツール”。
そこに笑顔が生まれることが、ものづくりの価値だと気づけたんですよね。それ以来、「誰かが喜んでくれるものを、自分たちの手で作りたい」という思いが原動力になっています。

経営の難しさ、他社との差別化を図る

多くのメーカーがある中で、他社との差別化をどのように図ってこられたのですか?

私たちは洗浄・裁断といった工程も社内で完結させており、これが大きな強みですね。多くの縫製工場は“縫うだけ”が仕事です。私たちは「縫製業のメーカー」として、自社でミシンを持ち、企画から製造、販売、さらにはSNS運用までを一貫して自社で行っています。特にアップサイクル事業では、素材の洗浄が非常に手間のかかる作業なのですが、早くから専用ラインを整備してきました。こうした取り組みにより、コストの削減や作業効率の向上が可能になり、見積もりも積み上げ式で正確に提示できるようになりました。

そして、この体制が評価され、今では行政、鉄道会社、大手自動車メーカー、プロスポーツチームなどから直接お問い合わせをいただくケースも増えています。例えば、作業着や使用済みのラグビーボールをバッグにリメイクした事例もあり、イベント販売を通じて多くの人に喜んでいただいていますね。

現在では、自社のホームページ経由での問い合わせが増えており、営業活動をせずともお声がけをいただける機会が広がってきました。結果、他社とは違う、唯一無二の縫製会社としてのポジションを築けていると感じています。

縫製業界の未来予想

縫製業界の未来予想
この業界の未来について、どのようにお考えですか?

正直に申し上げると、縫製業界は今、斜陽産業だと感じています。カバンや袋物を扱う工場の多くが小規模で、しかも高齢のご夫婦などが運営されているケースがほとんどですね。後継者を育てる余裕が無いまま年月が過ぎ、廃業も相次いでいます。
ただし、業界が厳しいからこそ、私たちは「残ったから仕事が来る」のではなく、「選ばれる存在でいよう」と意識してきました。特にアップサイクルを軸に、社会課題に向き合いながらものづくりを進めることは、縫製の枠を超えた価値創造だと思いますね。共創の輪を広げながら、未来の担い手を育てていく場づくりにも力を入れていきたいと考えています。

サンワード株式会社の夢や目標

サンワード株式会社の夢や目標
サンワードとして、これから挑戦していきたいことは何ですか?

アップサイクルに取り組む中で、私たちが目指しているのは「お客様の笑顔につながるモノづくり」を続けていくことです。ただ廃材を再利用して商品を作るだけで終わるのではなく、その先にある感動や驚きを届けることが重要だと思っています。
最近では、金属加工業や家具製造など、他の業種でもアップサイクルに取り組む企業が増えてきました。そうした人々と“競争”するのではなく、“共創”することで、社会にもっとポジティブな価値を届けていけるのではと考えています。
その一環として、将来的にはカフェのような空間を作りたいという構想もあるんです。障がいのある人が描いた絵を用いた内装や、間伐材で作った家具、アップサイクル商品の展示、オーガニックの食材を使ったメニューに囲まれながら、自然とSDGsや多様性にふれる場を用意できたら理想ですね。
モノを売るだけでなく、“想いが伝わる場所”を育てていく。
そんな新たな挑戦を、これからも続けていきたいと思っています。

経営者としての心構えややりがい

池田社長が経営者として大切にしている思いについて教えてください。

私は学生時代から「社長になる」という夢がありました。
大学では一時期、お笑い事務所に所属して活動していたこともありましたが、夢を叶えるためにはお笑いではなくビジネスだと方向転換し、就職の道を選びました。
そして、1999年に念願の社長にはなれたものの、何のために会社を経営するのかが分からず、迷いも多かったんです。
そんな中、工場の立ち上げや社員との関わりを通じて、目の前の仲間やお客様の笑顔に触れるようになり、「誰かのために働く」ことの喜びに気づきました。
今では商品そのものよりも、その商品が生み出す“会話”や“つながり”を大切にしています。「このカバン、消防ホースからできているんだよ」と笑顔で話してもらえることこそ、私たちのものづくりの価値ですね。
さらに、ダウン症や自閉症のある人と協働する中で、障がいの有無に関わらず、人として支え合える関係を築くことの大切さを感じます。それが私の理念であり、経営者としての原動力になっています。

これからも続く『笑顔』の連鎖を生み出す会社へ

これからも続く『笑顔』の連鎖を生み出す会社へ
御社が求める人材像や、働く魅力について教えてください。

現在、工場では外国籍のスタッフが増えてきていますが、もっと日本の若い人にも関心を持ってもらえるような会社にしていきたいと考えています。ミシンを踏める人材は年々減っていますが、私たちはただ“縫う”だけでなく、企画やアイデアを出し合いながら「面白いものを一緒に創る」環境を整えているんですよね。
現場では「こういう素材でこんなの作ってみたい」と自由に発言できる風土があり、自分の想いをかたちにする経験ができます。ミシンを使う現場はもちろん、本社でも営業やSNS運用、商品企画など、普通の縫製工場ではなかなか経験できない幅広い仕事がありますよ。
特にアップサイクルやSDGsに関心があり、自分の手で商品を広めていきたいという人には、やりがいのある職場ですね。
笑顔が広がるものづくりを、一緒に楽しんでくれる仲間をお待ちしています。

COMPANY INFO会社情報

企業名
サンワード株式会社
代表者
池田 智幸
所在地
大阪市天王寺区生玉町2番3号 小出ビル2F
設立
昭和61年2月
事業内容
ワイシャツ、袋物・企画製造販売
ホームページ
https://www.sunward-beban.co.jp/