株式会社i-plug|代表取締役 CEO 中野 智哉

必ずうまく行くと信じて突き進む力がOfferBoxを生み出した

株式会社i-plug
代表取締役 CEO
中野 智哉氏

ブラック企業やインテリジェンスでの経験から人材業界の課題を掴む



ご創業の経緯をお聞かせください。

大学卒業後に入社したのは、新聞の折り込みチラシで見つけた小さな会社でした。
しかし、労働環境が非常に厳しい企業で、給与は提示額の半分以下、経営も不安定だったため、わずか4カ月で退職を決意しました。
その後、約10カ月間は無職の状態が続き、「そろそろきちんと就職活動をしなければ」と考え、求人広告会社に入社しました。
業務内容は主にテレアポや飛び込み営業で、個人プレーが求められる仕事が中心でした。入社当初の営業成績は、会社内で断トツの最下位。這い上がるために、始発から終電まで働き、次第に社内の見る目も変わりました。在籍中に会社は統合や買収を繰り返し、最終的に株式会社インテリジェンス(現パーソルグループ)の社員になりました。
そんな中、リーマン・ショックが発生し、人材業界全体が大きな打撃を受けることになります。業績が悪化し、仕事の機会も激減しました。終業後、やることがなく、せっかくならビジネススキルを身につけようと思い、グロービス経営大学院に通い始めます。最初は1科目ずつ履修する単科生として学び始めました。学びを深めるうちに営業成績も向上し、経営の全体像が見えてきたことで、「いずれは自分で会社を立ち上げよう」という思いが強くなりました。この経験から、2012年4月にOfferBoxを誕生させました。

最初の人材紹介事業から素早く方向転換!最短でOfferBoxをリリース

最初の人材紹介事業から素早く方向転換!最短でOfferBoxをリリース
ご創業からの変遷を教えていただけますか?

最初に手掛けたのは、新卒向けの人材紹介事業でしたが、事業をスタートさせた直後から厳しい現実に直面しました。人材紹介は成功報酬型のビジネスモデルであるため、当時売上が発生するのが半年後からだったんです。また、競争が激しい市場の中、後発の企業が勝ち残るのは難しいことがすぐに明らかになりました。このままでは1年間の収益がゼロになる可能性が高いと判断し、事業開始からわずか20日で撤退を決断しました。
そして、2012年6月22日、「新卒採用領域に新しいマッチングの仕組みが必要だ」とひらめき、OfferBoxのアイデアを構想しました。そこから、たった1週間で事業計画を立て直し、メンバーとともに新たな方向へ舵を切ります。開発スピードを最優先し、最低限の機能だけを実装する形で、9月1日にベータ版をリリースしました。従来の採用手法とは異なり、事前に学生がプロフィールを登録し、企業がスカウトする仕組みを採用しました。
さらに、サービスを成立させるためには、学生の集客・企業営業・資金調達を同時並行で進める必要がありました。企業との提携を進める一方で、学生にもサービスの魅力を伝え続けました。結果として、短期間でOfferBoxという新しい採用プラットフォームが誕生し、今では多くの企業と学生に利用されるまでに成長しました。

OfferBoxへの自信が仕事のエネルギーに

新しいサービスをスタートしたときはどのような状況だったのでしょうか?

起業を決意したとき、「やらなければ生きていけない」という強い覚悟がありました。事業が失敗すれば自己破産も避けられない状況で、後がありませんでした。
しかし、「OfferBoxなら絶対に成功する」という確信があったんです。従来の就職活動では、学生が企業に応募するのが当たり前でしたが、OfferBoxは「企業が学生に直接オファーを送る」というまったく新しい仕組みです。このオファー型の採用モデルが新卒採用市場に受け入れられると信じ、全力で事業を推し進めました。


どのようにして事業開発を進めていったのでしょうか?

開発を急ぐ必要があったため、サービスの設計、営業、資金調達など、あらゆる業務を一気に進めました。特に学生の集客と企業営業は、サービスの成否を分ける重要なポイントでした。学生が集まらなければ企業は利用しないし、企業がいなければ学生も興味を持ちません。この「鶏が先か、卵が先か」の課題を解決するため、最初は企業を上場企業に限定し、信頼性を担保しました。
また、サービス開始当初から無料で学生登録を促し、利用者の母数を増やす戦略を取りました。その結果、9月のベータ版リリース時にはすでに一定数の学生と企業が登録し、サービスはスムーズにスタートしました。振り返ってみると、新しい市場を開拓するワクワク感と、生き残るための必死さが、仕事への強い推進力になっていました。


企業側からの反響はいかがだったのでしょうか?

企業の採用担当者の中には、これまでの採用過程にこだわり、当時は新しい手法に懐疑的な人も多かったです。そこで、直接企業に出向き、OfferBoxのメリットを徹底的に説明しました。「従来の採用では出会えなかった優秀な学生とつながれる」と伝えることで、徐々に企業側の理解を得ることができました。
その努力の積み重ねが実を結び、サービス開始から1年後には、多くの企業がOfferBoxを利用するようになりました。

経営者としての成功体験と失敗体験

経営者としての成功体験と失敗体験
経営者としての成功体験を教えてください。

自らの経営を「成功」とは考えていません。その理由は、まだまだ成長の余地があり、現状に満足することなくさらに発展させていきたいという強い想いがあるからです。
i-plugのミッションは、「つながりで、人の可能性があふれる社会をつくる」です。就職活動を終えて社会に出たものの、企業とのミスマッチにより本来の力を発揮できず、離職してしまう人が多い現状を変えたいと考えています。この課題を解決し、誰もが自分に合ったキャリアを築ける仕組みをつくることが、目指す未来です。その第一歩として生まれたのが、OfferBoxでした。
しかし、採用市場にはまだ多くの課題が残っています。たとえば、企業側が求める人材と学生が考えるキャリアの方向性が一致しないことや、働き方の多様化に企業の採用基準が追いついていないといった問題などです。この問題を解決するためには、単にサービスを届けるだけではなく、企業の採用の在り方や学生のキャリア選択の意識改革も必要になります。そのため、OfferBoxのさらなる改善と拡大を続けながら、社会全体の仕組みをより良くすることを目指しています。

株式会社i-plugの将来的な姿

会社の将来設計についてはどのようにお考えですか?

現代のビジネス環境は急速に変化しており、長期的な目標を定めることが難しくなっています。ロボット技術の進化を見てもわかるように、数年後の未来を正確に予測することは困難です。そのため、i-plugでは短期的な視点を重視し、「アップデート」をテーマに事業を進化させ続ける方針を取っています。
特に、私たちの事業でも重要な「コミュニケーション」においては、AIと人間の役割分担をはっきりすることが重要な課題です。どの業務をAIに任せ、どの部分に人間が関与するべきかを整理し、より良い形を見つける必要があります。たとえば、日程調整やデータ分析などの作業はAIが担う一方、企業と学生の間に生まれる会話や信頼関係の構築は、人間が対応すべき領域と考えています。こうした環境の変化に適応するため、私も積極的に情報収集を行っています。NewsPicksやYouTube、Facebookを使って、最新のビジネストレンドやテクノロジーの進展をチェックしながら、より良い戦略を模索しています。企業が成長し続けるためには、変化を恐れず、常に学び続けることが不可欠です。i-plugは今後も柔軟に事業を進化させ、新たな価値を創造し続けることができると考えています。

今後は大学との連携も視野に、OfferBoxを拡張させていきたい

今後は大学との連携も視野に、OfferBoxを拡張させていきたい
PRしたいサービスなどはありますか?

OfferBoxは、企業登録数が20,000社(2025年2月末時点)を突破しました。また、学生登録数は21万4,093名(25年卒、2025年2月末時点)と、多くの方々にご利用いただけるサービスに成長しています。この実績をもとに、今後は大学との連携を進め、より多くの学生が利用できる仕組みを整えていきたいと考えています。また、企業と学生を結びつけるだけでなく、大学の学びを社会とつなぐ役割を果たせるのではないかと考えています。たとえば、大学内のキャリア教育の一環としてOfferBoxを利用し、学生が在学中から社会との接点を持てる環境を作ることも可能です。企業側にとっても、学生の適性や能力をより深く理解できる機会となり、双方にとってメリットのある仕組みが生まれるでしょう。大学と企業がどのように連携できるか、関係者と議論を重ねながら具体的な取り組みを検討していきます。そして今後OfferBoxを、単なる採用プラットフォームにとどまらず、学生のキャリア形成を包括的に支援する存在へと進化させていきたいと思っています。

COMPANY INFO会社情報

企業名
株式会社i-plug
代表者
中野 智哉
所在地
〒532-0011 大阪府大阪市淀川区西中島五丁目11番8号 セントアネックスビル3階
設立
2012年4月18日
ホームページ
https://i-plug.co.jp