クックピット株式会社|取締役副社長 外園 史明 氏

漫画プロデューサーからスープメーカーの副社長に転身。クックピット外園史明が描くラーメンの未来予想図とは?

クックピット株式会社
取締役副社長
外園 史明氏

異色の経歴を持つデジタルマーケティングのプロ「外園 史明」

異色の経歴を持つデジタルマーケティングのプロ「外園 史明」


現在までの経歴について教えてください。

大学卒業後すぐにWebコンサルで起業したのですが、その最初のクライアントがクックピットだったのです。当時同社は売上1億円未満の会社でしたが、約5年かけて5億円規模へ成長させました。しかし、代表の本間と意見の相違で仲違いしまして。
それからは大手通信会社のWebコンサルを手がけるなどしていました。デザインの問題で3,500億円まで落ち込んだホームページの売上を、1年間でV字回復させ7,000億円まで伸ばすなど、かなり実績も上がりましたが、組織運営に課題を感じて会社の経営を部下に譲りました。
その後に始めたのが、父の漫画のプロデュースです。実は父親が漫画家でして、代表作としては「鬼畜島」や「パンプキンナイト」などがあります。LINEマンガの売上ランキングで上位を独占したこともありました。
その後、今から4年ぐらい前にまたクックピットに戻ったという経緯です。


クックピットに戻られた理由は?

本間から連絡をもらったのがきっかけです。当時はコロナ禍で、5億円規模まで伸ばした売上が1億円台まで落ち込み、債務超過も億を超えており、64歳の社長ひとりという状態でした。本間から連絡を頂き、再会しまして、現在は第二創業期として一緒に再ブランディングを進め、2年で債務超過を消して現在に至ります。


なぜご自身で会社を立ち上げずに、副社長として入られたのでしょうか?

私は既にある事業を「1から10、10から100」にするのは得意ですが、最初の「0から1」が苦手なのです。弊社はミシュラン店にも卸すような一流のスープを作れますが、代表は職人気質の最高のクリエイターで、私が「売る」部分を担うほうが自分に合っていると思っています。おこがましいですが、初代ホンダに例えれば、本間宗一郎氏を支える藤沢武夫氏のような役割です。


他の会社ではなく、一度疎遠になったクックピットに戻ったのはなぜですか?

製品の品質の高さもありますが、最大の理由は代表の人柄です。正直「この野郎」と思うときもありますが、とても魅力的な人で、この人とならやっていけると感じました。年齢は親子ほど離れていて、私にとっては第二の親父のような存在です。苦境に立たされた「親父」の姿を見て放っておけませんでした。

コロナ禍で打撃を受けても本物の無添加スープにこだわり抜く

御社の強みや競合他社との違いを教えてください。

本物の無添加スープを販売しているのが弊社の強みです。
スープには大きく分けて2種類あります。市場の多くは「化成品」といって、例えば、化学調味料を使用して豚骨味を出したスープでカップ麺の液体スープと同様のものです。化成品が多く出回っている一方、弊社はストレートスープといって絞めたばかりの新鮮な豚や鶏を5トン以上の常圧釜で8~10時間炊いてスープを作っています。完成後は急速冷凍して新鮮で美味しいままお店に配送するという仕組みをとっています。


ラーメン業界の今後のトレンドはどうなるでしょうか?

コロナ禍によって、ラーメン業界は7,000億円から4,600億円程度まで縮小し、大きな打撃を受けました。インバウンド需要などもあり、以前の水準まで回復する可能性は高いですが、そこからは伸び悩むと予想しています。8,000〜9,000億円程度までは伸びるかもしれません。しかし、これはラーメン単価の上昇が理由であって、おそらく店舗数の大幅増は見込めないと予想しています。
業界の流れとしては、今後はDXが重要になりますが、未だにFAX注文が多いなど、ラーメン業界はアナログです。しかしコロナ禍の新陳代謝で若い経営者が増え、本格的にDXに踏み切る流れが出てきています。各メーカーがこの波にどう乗るかがポイントでしょう。

また、ラーメンの味については、今後1〜3年は豚骨系が流行ると予想しています。ラーメン業界は約20年周期で流行が巡るので、昨年まで流行っていた清湯(ちんたん)スープに続き、次は新しい豚骨系が来ると見ています。もしDXが進めば、店舗の寿命のサイクルも早まるでしょう。従来の3〜5年から2〜3年へと縮まり、トレンドの変化も早まる可能性が高いです。数年ごとに新たなジャンルが台頭すると予想され、メーカーとしてはこの動向を逃さないことが重要になります。

ラーメンの海外進出が苦戦する理由。国内と海外、二極化戦略で勝負

ラーメンの海外進出が苦戦する理由。国内と海外、二極化戦略で勝負
早くから海外進出している店もありますが、意外と国内でもまだ余地があるのでしょうか?

海外市場は需要が高く、店舗の月商が日本の5倍程度になることも珍しくありません。ただ、原材料と水の違いにより日本と同じ味を出すのが難しいため、日本からの進出は苦戦する場合も多いです。近年は海外の個人がラーメン店を開業するケースも増えています。弊社のホームページも、海外からのアクセスが15%を占めており、今後は海外の方に向けた相談窓口を設置する予定です。
国内では、大手チェーンによるM&Aが活発化し、中小規模店を次々と買収しています。ラーメン業界も二極化が進み、新ブランドが注目されるとすぐ大手に買われる流れが加速しています。アメリカのIT企業が有望ベンチャーを取り込む構図と似ていますね。


海外では日本と同じ味を再現しないと売れないのでしょうか?それとも現地に合わせた味のほうが良いのでしょうか?

それが食品業界の難しいところで、同じ工程でも原材料や水質の違いで味が変わってしまうのです。円安の追い風で輸出は増えつつありますが、本当に海外でヒットするのは、現地の味覚に合わせた全く別タイプのラーメンになるでしょう。


御社の製品は冷凍なので輸送は可能かと思いますが、それでも現地に工場を作られるのは、将来的に現地の新しい味に対応するためでしょうか?

それもありますが、主な理由は別にあります。主要な輸出先である欧米やヨーロッパには輸出ができないのです。動物由来原料のスープは、各国の輸入規制が厳しく、現地法人を設立して現地で生産する必要があります。
逆に言えば、この状況が「日本に来ないとこの味のラーメンは食べられない」というインバウンド需要を支える要因にもなっているかもしれません。

組織づくりに失敗。マーケティングのプロが経験した大きな挫折とは?

経営者個人としての成功体験と失敗体験をそれぞれ教えてください。

意外と難しい質問ですね。失敗体験は山ほどありますが、特に大きいのは冒頭でも言いましたが、自分の会社の組織運営に課題があって、経営を部下に譲ったことです。私は組織づくりができなかったのです。父の漫画プロデュースのように個人ならうまくやれるのですが、組織になると統制が取れませんでした。やり方を論理的に説明してもなぜか伝わらず、誰ひとり私が描く戦略を理解して、一緒に歩むことができなかったのです。
そのような経験もあったので、クックピットに入って最初にやったのはNo.2の確保でした。約50店舗展開する中華チェーンの元No.2を右腕として迎え、組織構築を任せて、ようやく各部門が動いてくれています。失敗の秘訣というとおかしいですが、私は組織を作ろうとしてはいつも失敗してきたのですよね。


やっぱりご自身の強みと弱みを理解されているので、そういう動き方ができるということですね。成功体験のほうはいかがでしょうか?

成功体験の方は難しいですね。あまり成功しているとも思っていませんが、今までは携わってきた市場において、SEOはもちろん、関連コンテンツやSNSなども含めて、デジタルマーケティングを中心に市場の囲い込みをして売上を出してきました。今後は同様の手法を用いて、食品メーカーでありながら、市場をリードする食品マーケティング会社としての地位を確立したいと思っております。

SDGsとしてのスープづくり。学生たちに無料でラーメンを提供。

地域コミュニティとのつながりや社会貢献活動について教えてください。

昔は肉を削いだ骨というのは廃棄物扱いだったのだそうです。そこで、骨を買い取り、スープに加工し、販売することで新たな事業を産み出し、残った粉は肥料や飼料として再利用するというビジネスが弊社の始まりです。よって、事業自体がSGDsであって事業を通じて社会に貢献できているかなと。
また、地域の大学のイベントにキッチンカーを出し、無料でラーメンを提供する活動もしています。例えば「SNSフォローでラーメン無料」とかですね。若い世代の反応を探るマーケティングとしても役立っていますが、地域コミュニティへの貢献という面もあると思います。
あとは、地元食材を使った新しいラーメンの提案も行っています。例えば今は群馬のお店を手がけていて、群馬産の椎茸を溶かしたスープを開発中です。ご当地グルメはラーメンがいちばん多いと思いますね。

困っている飲食店の力になりたい。ぜひ声をかけて欲しい。

困っている飲食店の力になりたい。ぜひ声をかけて欲しい。
今後の目標についてお聞きします。例えばグローバル展開や上場など、将来どのような方向を目指されているのでしょうか。

そうですね、もちろんグローバル展開も進めていく予定ですが、それを実行するにはやはり資金が必要です。IPOも考えていますが、それ自体が目標というよりは、あくまで資金調達の手段として捉えています。ただ、先ほど言った市場の囲い込みがデジタル上でまだ完全にできていないので、これを年内に完成させることが今の当面の目標です。


最後にPRされたいことがあればお願いします。

弊社のビジネスは、ラーメンそのものを売るのではなく、飲食店に関するあらゆる困りごとを解決する「解決屋さん」のような形です。
例えば「売上が上がらないので助けてほしい」「新しい味を提案してほしい」「仕込みが大変なので改善してほしい」など、飲食店の様々な課題に対してサポートすることを目指しています。そのような、困っている飲食店の力になれたらと思っています。
いざというときに相談できる先があるということをぜひ知ってほしいですし、何か困ったらお気軽に相談に来ていただけたらと思います。

COMPANY INFO会社情報

企業名
クックピット株式会社
代表者
本間 義広
所在地
〒121-0836 東京都足立区入谷7丁目15−2
事業内容
ラーメンを健康にするための商品開発及びマーケティング。
ホームページ
https://cookpit.jp/